イノベーション・クーリエ事業

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「イノベーション25」の政策を受けて、様々な施策や活動が始まっています。その一つに、私も協力している「イノベーション・クーリエ」という事業がありまして、いろんな事業、講演会、会誌を発行するなどの活動をしています。

今回、横浜で「水」をテーマにした展示会を開催しました。トラック掲載型海水飲料化システムや、バングラデッシュで実用化されている簡単な水浄化装置などが展示されました。いづれも素晴らしいものでした。しかし、アフリカをはじめ、もっともっと現地のニーズにあった装置の開発も必要であることを痛感しました。

日本ではどうしても技術先導で、しかも技術者がより良いものを、より精度を高く、ということに囚われるあまり、現地の人からすると、高価すぎるとか、現実的ではないものになりがちです。また、資金援助も国に頼ってばかりになっているのではないかと感じています。素晴らしいものは多いのですが、一日でも早く現地に届ける、そのための仕掛けや資金のあり方にも、違った視点や工夫が必要と思います。例えば現地での雇用を増やしたり、貧困から少しでも助け出そうという視点も欠けているようにも思えました。それは多くの人に現地での生活感や生活体験が欠けているからではないか?そこが、“Demand-Driven”のイノベーションが大いに有効なグローバル時代にあっての日本の弱さだと思います。

私も講演をしましたが、グラミーン銀行の実例や、KickStartのような素晴らしいNGOの活動にも触れました。これこそがイノベーションによる「新しい価値の創造」です。

Stanford大学と日本起業研究

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昨年からStanford大学とStanford Project on Japanese Entrepreneurship (STAJE)という共同研究が行われています。“MOT”で著名な元副学長のWilliam Miller先生たちとはじめたのですが、5月29日に東京大学で公開の発表会がありました。

Dr. Millerと私は挨拶で参加。Miller先生は80歳とちょっとですが、まだまだ現役。また一つ会社を始めたそうです。東大の各務茂夫教授とStanford大学のRobert Eberhartさんが幹事でした。

私は、とにかく開国とイノベーションを催促する黒船“eco-platform”が来ている。つまり、先週はTEDxTokyo、そして来週にはTiEのTokyo Officeが開設されることを話しました。

雨の降る天気でしたが、250名ほどが参加し、皆さん熱心に議論されたようです。途中で退席をしていたので、後で聞いたことですが。この会議の様子はForbesで紹介されています。

日本、そしてSilicon Valleyの良いところを論じているのですが、いずれ報告書が出ると思います。日本には多くの可能性があるのです。しかし、大事なことは実行です。“Think Locally, Act Globally”ですが。工夫しながら、いくつかのパートナーと仕込みたいと考えています。

「重層的な国際交流」を推進する教育と人材育成を

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わたしは、この20数年にわたって、若者たちに世界との他流試合をさせることの大事さを主張してきました。このブログの太字で示したようなキーワードで検索してみてください。プロスポーツの開国も、1995年の野茂から始まったメジャーリーグ、そしてサッカーのワールドカップやJリーグなどをとおして、日本の若者が目指す目標と価値観が、世界の若者と同じ方向へと変化しているのです。

日本の“国技”である相撲でさえ国際化して、この夏場所の千秋楽、最後の2つの取り組みの力士は皆外国人力士でした。外国人力士は、相撲界全体で約7%、幕内力士では30%、三役では40%、横綱はというと100%です。それでも、このことに怒りを感じているわけでもないと思います。日本人もがんばれと応援する、そして日本文化の価値が世界で知られるようになっている面もあるのです。

そうです、人材育成こそが国家の根幹であり、日本の将来にとってもっとも大事なことなのです。このグローバルな時代に、若者にはもっともっと外の世界に出て行って、違いや多様性と自分の価値を認識し、世界の仲間との連帯を構築することがもっとも大事なのです。これが私の提言です。

「Foreign Affairs」の1・2月号にPrinceton大学国際関係学部長Anne Marie Slaughterの素晴らしい論文が掲載されています。日本の大学との対比で考えると、日本の将来には不安が大いにあります。彼女は1月末から米国国務省の政策局長に就任しました。素敵な人事です。

先日、世界銀行の会議に参加しましたが、私の主張がハイライトされています。「Multilayered Brain Circulation」の重要性です。この主張を皆さんが支持してくれている証拠だと思います。

さて、日本は変わり大相撲化は進むのでしょうか?大学も企業も、内向きの先生や経営者が多くて、なかなか進みませんね。

TEDが東京へ

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TEDが東京へ」といわれて、「いよいよ来たか」と思う方は相当な人ですね。でも本当なのですよ、これが。

5月22日、TEDxTokyoがお台場の科学未来館で開催されました。200人限定で全て英語。日本の方は40%までという設定。私もお手伝いしたのですが、ライブの時間は最長でも1人18分と限る方式で進められ、TEDからいくつか選んだ映像も織り交ぜながら、とても楽しく、そしてinspireされる一日でした。

企画の2人、Todd and Patrickの息のあったコンビ、テンポのよい司会進行がとてもおしゃれ。

TEDxTokyoのサイト、また、本場のTEDのサイトも訪ねてみてください。

ボランティアで参加した多くの若者たちに感謝。

カナダからの訪問

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このところカナダの話題(参考 123) が多いのですが、日加修好80周年ですから例年より交流が多いのかもしれません。

カナダの国会議員、House of CommonsOlivia Chowさんが、大使館の政治担当一等書記官Christopher Burtonさんを伴って、政策大学院大学(GRIPS)の私のオフィスに来られました。

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写真: Chowさん、Burtonさん、角南さん

時間は短かったですが、私と角南さんはトロントへ行ったばかりでしたし、話題は尽きませんでした。Chowさんは、Ito Peng教授も仲間ですよ、といっておられました。

どこで、誰がどう繋がっているか、分かりませんね。これが楽しいのですけどね。いつでも、どこでも“個人”として評価されて仲間が増えていくのです。

2009年度科学ジャーナリスト賞

5月14日、科学ジャーナリスト賞の授賞式が東京で行われました。私も審査員の一人として、受賞者の磯部泰弘さん、吉尾杏子さんを紹介する機会がありました。

皆さんそれぞれ力作で、特に楽しかったのが受賞者の言葉でした。ちょっと短かったでけど。作品からは想像もつかないような、受賞者たちのその作品へのいきさつ、思い、そして作者の人柄がうかがえて、楽しい時間でした。

多くの候補作品から選ぶのはとても難しく、またつらいものがあります。大賞の「ダーウィン『種の起源』を読む」は北村雄一さんの作品で、まだ40歳ちょっと。イラストレイターでサイエンスライターだとか。

進化について考え始めたとき、じゃあ「種の起源」でもと読んでみたが、読んでみると理解しにくい。そこで今度は、ダーウィンの書いた英語で読んでみた。しかし、それも難解だ。そこから疑問が次々と出てきて、解説シリーズが始まり、シリーズ3回が終わったところで本にしないかと依頼があったそうです。死ぬような思いで、猛進したそうです。

特に今年がダーウィンの生誕200周年ということで書いたわけではないようです。でも、この仕事量の多さに比べて、収入はせいぜい年に200万円になるかどうか。そんな切実な話でした。本気で真剣に取り組んだのでしょう。こういう方は大変貴重ですね。

皆さんも是非読んでみてください。

この本の英語版を出そう!Jared Diamondを目指そう!これが私の提案です。出版社の方、お願いしますよ。

Torontoから-2

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「豚インフルエンザ」のニュースが飛び交う中、5月2日の午後に再びToronto大学のMassey Collegeに向かいました。ちょうど昨日のMunk Centerの向かいにあります。Gairdner賞の責任者で、旧友のJohn Dirksさんを5年ぶりに尋ねました。Washington DCから、AAAS の会議に参加していた有本氏も合流。Collegeの古めかしく格調高い雰囲気の小ぶりな図書室で1時間ほど過ごしました。

すでにご報告したように、今年はこのGairdner賞の50周年にあたり、山中さんと森さんの2人の日本人が受賞 しましたので、表敬訪問です。今年の10月に行われる授賞式や記念行事などについても話を聞きしました(参考 12 )。

ついでProf. Jun Nogamiとの面談。Nano-Materialsの第1人者で、2月にCanadaのNanotech研究推進視察団として来日さられた折に、東京のCanadian Embassyでもお会いしました。

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写真1: Massey CollegeでDirksさん、有本さんと

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写真2: Nogamiさん、角南さんと

その後、Peter Singerさん(参考 1 )とお会いし、来年Canadaがホスト国となるG8サミットのアジェンダ等について、共通の話題で議論を行いました。

夜はIto Peng教授と彼女の友人、有本さん、そして角南さんと、レストラン“Sotto Sotto”で楽しいデイナー。最後はもちろん“Ice Wine”で。日本が一番のお客様だとか。

「出る杭」を伸ばす他流試合

4月17日のブログでGairdner賞について書きましたが、その中で、京都大学の2人の教授、森和俊さんと山中伸弥さんが主として日本での研究成果で受賞したと紹介しました。これまでの日本人受賞者の経歴から見ても、珍しいことだったことが見て取れると思います。

森先生は、若いときに退路を絶って米国で研究するようになりました。日本プロ野球の、ある意味「ムラの掟」を破ってメジャーに行った野茂投手(私と石倉洋子先生が書いた「世界級キャリアの作り方」でもこの事の本質を書いています)を見ても、米国で置かれた立場の、切なく追い込まれている感じが出ていませんか。

若い時にこのような境遇の中で実体験を積んだ経験があるということも「出る杭」の特徴の一つでしょう。これは「出る杭」がブレイクするのに大事な条件だと思います。特にこのフラットでグローバルな時代ではね。研究に関してだけじゃなく、世界中のどんな分野においても、成功している人たちに共通して見られるパターンです。組織でなく、個人で修羅場をくぐる経験、そして多くの異質な人たちとの出会い。これらは何物にも代えがたい「人生の心棒」をくれるでしょう。世界観も変わるでしょう。

最近、この山中先生と生体肝臓移植を確立した田中紘一先生と鼎談を行う機会がありました。山中先生も日本の研究者としてはとても“変”な「出る杭」の経歴の持ち主です。紆余曲折の経歴、しっかりしたお考えで「iPS」という多様な細胞に分化可能な細胞を皮膚細胞から作成したのです。この田中先生、山中先生、そして私の鼎談の記事は、下記からPDFをダウンロードしてみることができます。

 「iPS細胞作製で、日本の研究環境は変わったか」 (DOCTOR’S MAGAZINE 2009年5月号)

科学雑誌「Science」でも2008年のBreakthrough of the Yearで山中さんを取り上げています。このInterview記事はWebで見ることができます。英語での受け答えなど、なかなか落ち着いていますよね。たいしたものです。

若い人を伸ばす、若者を世界に触れさせる、これが日本の人材育成に一番欠けている部分なのです。

Gairdner賞、山中、森のお二人の受賞と素晴らしい先達たち

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顕著な学術研究に対する顕彰があります。医学生命科学分野でもいろいろな賞がありますが、この分野で最も権威があるものとしてはGairdner(ガーデナー)賞、Lasker(ラスカー)賞、そしてNobel賞というところかと思います。

Nobel賞は20世紀が始まったばかりの1901年から行われていて、広く知られています。いつも10月の初めに行われるNobel賞の発表はニュースをにぎわします。受賞者リストは19世紀末から20世紀の100年の科学の変遷と大進歩を表しているといってもいいでしょう。去年は自然科学分野で南部、小林、益川、下村さんの4人の日本人(「日本人」の定義についてはそれぞれで考えてください)が受賞して大いに話題になり、私たちに自信を与えてくれました。

Lasker賞というのは1945年から始まりました。臨床医学賞と基礎医学賞が主要な賞で、基礎医学では1982年の花房秀三郎、87年の利根川 進、89年の西塚泰美、98年の増井禎夫さんたちが受賞しています。臨床医学では2008年に遠藤 章さんが受賞しました。この方たちのうち、受賞対象が日本での成果が主だったのは西塚、遠藤先生のお二方だけです。

Gairdner賞は1959年からで、今年がちょうど50年目になります。今年は山中伸弥さんと森 和俊さんが受賞され、京都大学から2人の受賞者が出たことになります。山中さんは国内外でよく知られている「iPS」で、森さんの仕事は地味ですが素晴らしいものです。

4月10日の朝日新聞の記事にもあるように、今までのGairdner受賞者にはLasker賞を受賞した利根川、増井、西塚さんのほかに、石坂公成、照子ご夫妻と小川誠二さんがいます。受賞対象が日本での研究が主だったのは、西塚先生と今回のお二人です。

Lasker、Gairdner賞ともに、受賞者のうちからNobel賞の受賞者がどれだけ出るか、意識しているようでもあり、また、同じ分野でも3つの賞の受賞者が微妙に違った人選があるところもどんな議論がされたのか、推論してみるのもいいでしょう。特に2001年のNobel医学生理学賞になぜ増井さんが入っていないのか、Natureなどでちょっとした議論がありました。

Nobel医学生理学賞はまだ利根川さんだけしか受賞していませんが、これから出てくるだろうと楽しみにしています。

小川誠二先生は、人間の脳機能研究に広く使われている「fMRA」の原理を発見したかたで、125周年を迎えるScience誌(7月1日号)で、歴史上、科学の進歩に貢献した人たち約125人の中に入っている唯一の日本人なのです。

La Jollaから、Entrepreneurship会議

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Kauffman財団 は「Entrepreneurship」(「起業家精神」とか、「進取の気性」(梅田望夫:「ウェブ時代 5つの定理」)とでもいいましょうか、何も事業ビジネスのことだけではありませんから)にフォーカスした財団で、去年はGlobal Entrepreneurship Weekを世界に展開し、日本でも本田財団の協力を得て、私の所属する政策大学院大学と京都でいくつかのプログラムが開催しました

このKauffman財団とUCSD(University of California San Diego)の共催で、“What Industry Wants from Universities”というテーマで、米国、英国、日本、カナダの4カ国で2日間の会議が開催されました。各国から数名ずつ参加し(ホスト国の関係者もいるので、米国の参加者は当然多いですが)、政策を含めて議論しました。プログラムの内容もなかなかで、有意義な会でした。特に英国からの参加者の、ウィットに富む発言は会議の議論の進行を和ませました。このセンスは素晴らしいものです。

会議の内容については、いずれWeb等に出たところでお話しましょう。

日本からの参加者は、私の他に、GRIPSの角南さん東北大の原山さん東大先端研のKnellerさん、そしてWilliam Saitoさんの5名でした。これは珍しいメンバーですね。皆さん、ここ数年は日本で仕事をしていますが、海外で教育を受けたりキャリアを積んだ人たちばかりでした。

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写真1: 日本からの参加仲間
このほかの写真はPicasaにUPしています。

気持ちの良い気候と素敵なキャンパス、そして楽しい仲間達というところですかね。何かすっかり気分が晴れやかになりました。会議が終わってから“Calit2”を案内してもらいました。土曜日で人は少なかったですが。

San DiegoはちょうどWBCの始まる直前でした(日本の優勝、素晴らしかったですね)。

しかし、やっぱりCaliforniaは明るい。素敵なところです。