巨大構造物を訪問する:浜岡原発、君津製鉄所・発電所

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12月11日(日)、一日がかりで中部電力の浜岡原子力発電所を、三人の友人と訪問する機会を持つことができました。

福島原発事故をうけて、新しく整備された5つの発電所、津波防壁、かさ上げされたいろいろな器具・構造物、電源車や消火車などを見てきました。

1、2号機は廃炉へ、3~5号機は再稼働に向けて、真面目に安全対策を進めていることころです。

3、4号機の中に行ってみると、これもさらに補強がしてあり、中には複雑な修理のための補強物などがあり、内部を見て回るにも、下から上へ、また下へと、狭い階段と種々なパイプなどがあり、これは本当に大変です。

建屋のトップから使用済燃料棒のタンクの水を見ながら、なぜ最近の福島第二原発で60ガル程度の地震でこの水が減ってしまったのか、などの質問もしました。

しかし、この巨大構造物と、複雑極まりなく縦横斜めにつながりあう器具、チューブなどを見ていると、停電、地震、火事、津波、雨、台風、夜中など、条件の悪いところで、それなりの大きな事故が起きた時に、この巨大で複雑な内部構造の中で、果たして多くの人たちがうまく機能するのか?直感的にでも考えてしまいます。

昔から、人間は巨大構造物を作り、人々を驚かせ、治めてきました。ピラミッド、万里の長城、東大寺の大仏と大仏殿、ヴェルサイユ宮殿、紫禁城などなどです。

この原発のような複雑な機能と巨大構造物を、人間がいざというときに制御できるのか?と直感的に感じてしまうのは普通の感情でしょう。まさに、”畏れ”、”Awesome, Stunning”でした。

Facebookにも「とき放たれたプロテウスを人間がコントロールできるのか、という「根源的な問い」なのだろうか?」と記しましたが...。

13日(火)は、これも一日がかりで、駐日UAE大使のHis Excellency Mr Khaled Omran Sqait Alameri大使たちと、千葉県の君津にある新日鉄住金の製鉄所と、その隣にある東電の火力発電所を訪問しました。これらも巨大建造物です。すごいものです。

ところで、Alameri大使は、私が医学部長をしていた頃に、東海大学工学部電気工学科に留学していた方なのです。うれしいですね、このような関係は。

 

福島原発、地震と津波再び:福島原発の事故から何を学ぶのか?

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11月22日(火)の早朝、東日本沿岸でまたM7.4の地震があり、場所によっては1.4Mに達する津波もありました。あの大災害、そして歴史的な福島原発大惨事から5年半のことです。

言うまでもなく、5年前の大惨事に比べれば、幸いにしてそれほどの被害の状況ではありませんが、福島第2原発ではちょっとした事故がありました。その3号基では、保管されている約2,500本の使用済燃料棒を冷やしている水の循環が約100分の間、止まったとのことです。

あまりメディアなどでは取り上げられていませんが、この福島第2原発の事故は、あまり軽く見ることはできないと思いました。

第1に、日本は地震大国という事実です。世界で起こるM6以上の地震の約20%は、日本の周辺で起こっているのです。「地震、かみなり、火事、おやじ」、地震は予測できませんし、「2011.3.11」のような大きな地震の後は地盤の動きが続くので、地震、火山活動は当分のあいだ油断できないということになります。

政府は、南海トラフで大地震が起こるとの想定でいろいろと対策をしているということです。しかも、11月5日が「世界津波の日」となり、この11月26日には高知・黒潮町で世界30か国の360人もの若者の集まりが開催されました。

第2に、日本には、まだ50基という多くの原発があり、その中に多くの使用済燃料棒が原発建屋で水の中に保管されているということです。今回の福島第2原発は、5年以上も止まっていたので、使用済燃料棒の熱もそれほど高くはなかったという幸運もありました。3.11の事故の時には、米国は停止中の福島第1原発4号基で「使用済み燃料棒を冷やす水」の喪失に大きな懸念を持っていたことはよく知られています。

第3に、今度の地震のユレは100ガル以下のものでした。日本の原発は400~600ガル以上の地震にも耐えるように設計され、その対策(”バックフィット”)がされている”建前”になっているのですが、それがどこまで本当に想定されているのでしょうか?「使用済燃料棒の対応」については想定外なのかも?まさかね?とは思いますが。大体、「使用済燃料棒」は建屋の上の方にあるので、地震によるユレは、地表に比べれば、相当なものになるはずです。この「燃料棒を冷やす水」は大丈夫なのでしょうか?

これらの対策にしても、日本の原発は、福島の教訓として何か対応がなされているのでしょうか?川内では?ほかの再稼働予定のものでは?大いに心配です。

あまり聞いたことがないような気もしますね。たとえば「ドライキャストで...」などと時々つぶやいているようですが、具体的に何か進んでいるとも思えませんね。形だけの議論は、その都度しているようにも聞きますが...。

原発の再稼働ばかりを言っている割には、しっかりと対策を進めているような気もしません。今度の事件で、いい加減な対策の一部が、世界の関係者にまたまた「バレてしまった」とも言えます。

ところで、私が委員長を務めた「国会事故調」の報告書の最後に、私のメッセージとして、以下のように記しています。

「...私たちの身近に教訓となり得る現実がある。2004年12月にマグニチュード(M)9.1を記録したスマトラ島沖地震では、翌年にM8.6の地震が、今年(註;2017年7月時点です)も8.6という大地震が起きている。同じことが、今回の東北地方太平洋沖地震で起こらない保証はない。脆弱な福島原子力発電所は言うまでもないが、安全基準が整っていない原子力発電所への対策は、時間との競争である。...」、と。

今回の地震については、New York Timesの記事にも、私のコメントの一部が掲載されています。

日本は、けっこうお粗末な状態なのです。外からは、いろいろ聞こえてきますし、いろいろと聞かれるのですが...。

会談などいろいろ

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20161117

このところ、いろいろな「ユニーク」な会食、パーティー、レセプションなどの機会をいただきました。私的なものは数えるほど無いのですが、大使館関係のものがいくつかありました。

BirdLife International恒例のファンドレイジング(名誉総裁の高円宮妃殿下は、三笠宮様の喪でご欠席)、フランスのPasteur研究所と東京大学、京都大学との新しい協定関係のセレモニー、仙台卸町(おろしまち)に設置されたカタールの東日本大震災復興義捐金によるIntilaqイノベーションハブ1)の開所式、ノルウェー大使館で外務大臣を迎えてのレセプション、フランス大使館、スイス大使館、オランダ大使館、英国関係のいくつかの会合などなど。

そこでちょっと感じたこと。

ある大使館から大臣訪問のランチにお招きを受けました。「10人ほどで」ということだったのですが、出かけてみるとなんと日本側は私一人で、後は大臣とそのご一行5人ほどと、駐日大使、大使館スタッフといった会でした。

しばらくお話を聞いていると、福島原発事故とその後についてもっと知りたいというものでした。このような経験は、国会の事故調査委員会を終えてから何度もあったことです。

ある時は国賓として訪日された国家のトップから、福島以後の日本の原発政策について政府の関係者や担当者たちに問いわせても、理解できるような説明がなく実に不可解である、との理由で、私に説明してほしいとお招きを受けたこともあります。

確かに、役所の担当者の説明は、通訳が入るにせよ、入らないにせよ、原発事故後の政策の説明は、もっと別次元の、実にわかりにくい理由があるのだろうと思います。わかりやすく説明しようがないほど、「理屈に合わない」こともいろいろありますからね。政府の担当者にとっては、わかるように説明のしようがないのだろうということでしょう。

しかし、福島原発事故のような「歴史的原発災害」について、世界共通の理屈で説明できないというのは困ったものです。

今年3月に出版した「規制の虜」にも書いているところですが、実に困った問題なのです。

これは、国家統治のありようの信頼の基本なのですから。

自然エネルギー構想の5年、孫 正義さんのすごさ

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東日本大震災をうけて、新しいエネルギー構想を打ち上げ、財団も設立、さらに、ご自身の事業でも世界を駆け巡り、超大な構想で世界を駆け回る孫正義さん。

話題提供者としてこれほどの人は、日本ではもちろん、世界のビジネス界でもなかなかいないでしょうね。批判するのはやさしいですが、自分のこととして考えるとどんなものでしょう。

孫さんは、福島原発事故後に始めた新エネルギー構想でも、休んでいるわけではないのです。9月9日に開催された、この財団の講演会にお呼びいただき、パネルに参加しました。

こちらの自然エネルギー財団のサイトで、基調講演他いろいろ見ながら聞くことができます。
http://www.renewable-ei.org/activities/events_20160909.php

久しぶりにお会いする、コーぺリエル理事長、ロビンスさん(トップのビデオの14分あたりから)、そして孫さんのスピーチ(同じく43分あたりからと、上から2つ目のビデオのはじめから)と、どれも素晴らしいものです。特に孫さんの考え、着想、行動力、話の構成など、そして質疑への回答など、見事なものです。

その後の世界や、米中ほかの動向、政策などを聞く、そしてよく考えてみても、日本が世界の潮流に取り残されていくのが感じられると思います。

悲しいことですね、国の中からしか世界を俯瞰できない、エネルギー政策に責任ある、そして日本の責任ある立場の人たちの貧しい精神構造。

生かせる技術は優れたものをたくさん持っているのが日本なのですが…。生かさなければ技術は寝ているだけ。

福島原発事故という世界史に残る大事故からも何も学べない、大きな構想を描けない悲しさ、ご都合主義のエリートたちの政治と政府とメディア、そして学者たち。「辺境の国」の人々の”マインドセット”でしょうか。

まだまだ、日本の電力政策の「規制の虜」状態は続きます。

当日は、私の近著「規制の虜」を出版社から「即売」していただいたのですが、予想を超えて、あっという間に売れてしまったようです。皆さん、ありがとうございます。

3月11日、福島原発事故から5年、「規制の虜」を出版、そしてコーネル大学へ

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あの悲惨な東日本大震災と福島原発事故から5年の時が流れました。どの程度の復興が進んでいるのでしょうか?むずかしい問題ですね。

いくつかの原発が再稼働されていますが、すぐに事故とか、ちょっとしたことがいろいろ起こっているようです。

福島の原発事故も、この処理についてはこれから何十年もかかるでしょう。想像もできないような時間ですし、今でも、またその先にもいくつもの難問・難関があります。

この機会ですので、「憲政史上初めて」の国会による福島原発事故調査委員会の委員長を務めたものとして、「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」という著書を出版しました。書店でも、アマゾンでも購入できます。できるだけ多くの方に読んでいただけると幸甚です。日本の”将来”はいまのままでは厳しいと思います。

出版に先立って、日本記者クラブ外国人記者クラブで、記者会見を開催しました。これらはYouTubeでも見ることができます。

日本記者クラブでは、福島原発事故に関係した講演は今回で5回目なのですが、その都度のメッセージは、基本的に「変わる世界、変われるのか日本」でした。

その後すぐにIthaca(NY)にあるコーネル大学にいきました。ここのマリオ・アイナウディ国際関係研究センター(センタ―長は宮崎教授)による企画で、3月11日に合わせて、「原発事故から何を学んだのか」を議論しようという目的です。

議論の相手は、プリンストン大学のペロウ教授、ヴァージニア・ポリテクのシュミット教授1)です。こういう議論に参加するのは、いつも楽しいです。その後は、レセプション・ディナー。

翌日も日本からの学生、先生たちとの朝食。快晴の中、広いキャンパスを散歩し、夜は日本と中国からの二人のポスドクをディナーにお誘いして、いろいろと話を聞きました。

共通の話題は、日本からの学生も先生も、”数が少ない”ということでした。

世界は広いのです、若い人たち、もっともっとチャレンジしてください。世界のみんなが待っていますよ。

国会事故調の本「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」を上梓

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2011年3月11日の東日本大震災、そして歴史的に残る福島原発の大事故。あれからもう5年の月日がたとうとしています。

あの大震災と原発大事故の3ヵ月前には、今や世界を席巻している「アラブの春」が、チュニジアで始まったのです。

このアラブの春は、その後、北アフリカ、中東に広がり、今では、北アフリカやシリアから、欧州へ多数の難民が押し寄せるという、予想もしない状況となっています。

この5年の世界の大変化の中で、日本はどうなのでしょうか?

そんな思いもあって、「規制の虜:グループシンクが日本を滅ぼす」というタイトルで、福島原発事故から5年、私が委員長を務めた、”日本憲政史上初”の国会による、独立した「福島原発事故の調査委員会(通称「国会事故調」)」を通して、「あまりにも変わらない日本」について、この本を書き上げました。

3月10日に発売予定ですが、アマゾンから予約もできます

今日は日本記者クラブで、この本の紹介を兼ねて、記者会見をしました。

この本を、みなさんが手にしていただけると幸甚です。

お知らせ

福島原子力事故から見えてしまった今までの日本社会、責任逃れする「責任ある立場」の大人たち、そして事故から学び、自分のこととして行動する若者たち。

河北新報の掲載記事を紹介します。

1:「<話そう原発>「なぜ」生徒ら問う」 国会事故調報告書を読んで(上)

2:「<話そう原発> 自主性を引き出す」 国会事故調報告書を読んで(下)

3:「<話そう原発> 民主主義が機能せず」

 

ペンシルベニア大学

オタワから、次はフィラデルフィアへ向かいました。ペンシルべニア大学の法科大学院ロースクールのお招きです。

ペン大は、40数年前ことですが、私が初めて海外留学したところです。

2年ぶりのフィラデルフィアでしたが、以前ちょっと勘違いをしていたことに気が付いていたので、40数年前に住んでいた、郊外のアパートを尋ねてみました。名前こそ変わっていましたが、いまでも結構モダンな感じのままで、サイズは当時感じていたのよりも小さく感じました。貧しい日本から来たのですからそんなものなのでしょうね。

夜はちょっと遅くなったのですが、Havarford大学に留学している、HLABの第1回に高校1年生で参加した野村くんを夕食にお呼びして、いろいろ話を聞きました。このような若い人たちがいろいろと苦労をしながら活躍しているのは、頼もしい限りです。

さて、今回の訪問の主目的は、ペン大ロースクールでアジアフォーカスのプログラムを立ち上げ、その記念行事の一つとして、アジアでの「大災害と賠償」のテーマで、組まれたカンファです。

取り上げられたのは、中国の四川大地震、インドボパールのユニオンカーバイトの化学工場の大惨事、そして福島原発事故の3つです。もちろん、私は福島の原発事故の関係でお招きを受けたのです。

前夜にKenneth Feinbergさんの基調講演がありました。質疑応答を入れて約90分にもなるセッションでした。「9.11」、「英国石油BPのメキシコ湾の石油採掘災害」などの大災害の補償について、飽きることない、迫力といい、説得力といい、お人柄そのままの素晴らしい講演でした。彼の講演は、教育者として、また活動の実績からも大変な評判があるようです。

講演前にしばらくお話をしたのですが、このような大惨事の補償について、日本政府からも聞かれたことがあるけどね…、といったお話も伺いました。

2日目は、1日にわたるセッションで、なかなか良かったです。四川、ボパールはそれぞれ中国、インドの政治学者と演者とのパネルでした。私はロースクールで講演するのは初めてですので、皆さんあまりパワポを使わないとか、ちょっと戸惑ったのですが、MITの日本政治の研究者であり、福島原発事故後の日本について、「3.11: Disaster and Change of Japan」(2013)を著したRichard Samuelsさんとの二人でプレゼンとパネルを行いました。

夕方の1時間ほどペン大のキャンパスを巡り、昔の研究室のあたりには、医学部の活動の様子を映すように、いくつもの新しい建物があって、活躍ぶりがうかがえました。

最後の夜は友人と3人で夕食、翌日トロントで1泊後、羽田へ、11月9日(月)出発、23日(月)帰国という長旅でした。最後の日に風邪をひき、声が出なくなりました。

うれしい便り – 3

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日本を代表する企業、東芝をめぐるスキャンダルは、世界を驚かせました。残念なことです。

その背景には「企業文化」という議論もあったわけですが、先日このサイトに掲載したように、わたしたちが国会事故調で指摘した「日本人多くの「マインドセット」、つまりは「日本の文化」論と根本的問題は同じだ、東芝問題は日本企業、組織の例外ではないのだろう、と指摘されているのです。

福島原発の事故の根底にある問題、”Root Cause”を指摘した国会事故調の指摘を、世界も認識しているのでしょう。

企業統治などのコンサルを手掛ける「Reputability」”Loyalty – Virtue and Risk” というコラムの中で指摘しています。ここでは日本組織で典型的に見られる ”Groupthink”12)についても意見を述べています。

福島ほどの大事故からさえ学ばない、何とかごまかしている、福島原発事故を表面的な問題の対応で片付けている、それなりに責任ある立場の人たちの意識というか、ご都合主義、再稼動をめぐっての諸課題にも、世界の識者は結構注目しています。

失敗から学ぶ、責任を果たす ”Accountability”、これは組織、企業、政府、国家など、グローバル世界での信頼の根本です。

東芝問題に見られる懸念、国会事故調の指摘と同根

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東芝が大変なことになっています。日本を代表する企業の一つですから、国内外での懸念も、注目度にも大きなものがあります。

問題の根っこは4年前のオリンパスのスキャンダルと同じ企業統治の問題だ、と世界では理解されるでしょう。もっともなことです。

主要な記事に Newsphere の解説、そして Financial Times (FT) の大きな見出しの記事(閲覧には登録が必要です)があります。さらに、この FT の記事の最後に出てくる Leo Lewis 氏による囲み記事 ”Problem of culture; Ever fiercer profit target imposed” では、わたしが委員長を務めた、いわゆる「国会事故調」の指摘した中心的メッセージと同じ問題が根底にある、と指摘しています。

The description is eerily similar to that used in the independent report on the Fukushima nuclear disaster, which blamed Japan’s “reflective obedience” and “reluctance to question authority” for contributing the poor handling of the disaster.

ウェブに広がる世界の中では、透明性、公開性、自律性こそが信頼の基本なのです。日本の企業統治の信頼が揺らいでいるのです。社外取締役を置いても形だけなのではないか?監査はどうなのか?ということです。

このサイトで去年の9月22日から10月27日にわたって掲載した、国会事故調の調査統括を担当した宇田左近さんの著書「なぜ「異論」の出ない組織は間違うのか」の趣旨が、組織統治の重要事項であることを、改めて認識し、改めることです。

「日本の文化」に見て取れる「思い込み、日本の常識」の課題です。一度失われた信頼を取り戻すのは大変なことなのです。