グローバルヘルス関係会議の一週間

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4月に入ると、5月のG7サミットもあって、そのアジェンダ関係の会議や動きが活発です。G7(はじめはG6)サミットが始まったのは1975年で、1979年の日本がホスト国の時に初めて「Health」というキーワードが提示されたのです

その後も、日本は2000年の沖縄サミットで「グローバルファンド」のコンセプトを提案し、2008年の洞爺湖では「保健政策強化こそが人間の安全保障」を提示した歴史的背景があります。

つまり、グローバル時代になって、昨今、「グローバルヘルス」が世界の大事なアジェンダの「キーワード」になってきていることを、日本は先取りしているような形にもなっているのです。

4月18日(月)にはワシントンのCSISとの共催で、私が主宰しているHGPIがAntimicrobial Resistant(AMR)の問題にフォーカスした会議を開催しました。この詳細は今後CSISのサイトにも出てくることでしょう。この会議はとても内容が濃いもので、議論も的確で、参加者から極めて高い評価を受けたように思います。

19日(火)は英国大使館で、エリザベス女王陛下90歳の誕生日をお祝いする園遊会。Hitchins大使のいつもながらの素晴らしいスピーチに皆さんが感心していました。G7サミットへのアジェンダや認知症などを担当している一等書記官としばらく意見交換の時間を持ちました。

20日(水)の朝は、英国の某シンクタンクのヘッドと会食。東シナ海の状況など、なかなか聞けない話を聞くことができました。来月のG7サミットでは、英・ドイツなど、国内で大問題を抱えているので、日本のアジェンダセッティングはなかなか難しいという点で、私は意見交換しました。いまやG7国のGDPは、世界全体のGDPの50%を切っていますし、世界のアジェンダでもっと大事なのは、今年のG20ホストの中国の動きでしょう。

21日(木)はGlobal Fundの日本の貢献についての超党派の朝食懇談会。自民党は逢沢一郎議員、民進党は古川元久議員です。駐英大使就任直前の鶴岡さんも出席で、いつものことですが、かなり「厳しい」発言をされました。彼には2008年のG8サミットで大変お世話になりました。

22日(金)は日経の主宰する第3回「アジア感染症会議」1)に参加。これには3年続けて参加していますが、最初は基調講演、そして去年と今年は最後のまとめをする機会をいただきました。さらに、今年はGAVIのCEO、Seth Berkeleyさんとの対談を、FTのAndrew Wardさんの司会でたのしく進めることができました。

GAVIの日本の貢献については、私は国債を使うことも考えることを提案しました。GAVIの資金の約20%が英国、ノルウェイなど9か国の国債になっているのです。

今年は、日本とG7サミット、そしてAMRの最近の話題が出ます。日本企業の素晴らしい技術の紹介がいくつもありました。しかし、これを「グローバルでビジネスを」という視点でみると、まだまだ思考が内向きのように感じます、惜しいことです。

でも、この2日間の会議で私どもの運営しているGHITファンドについて、国内外の方たちがコメントしてくださるのでうれしくなりました。これは、ゲイツ財団を組み込んだ全く新しい「Public – Private – Partnership」ですし、国内外の注目度が上がっているのはうれしいことです。

23日(土)はこの会議の2日目。武見敬三議員の格調高いスピーチ、そしてパネルなど。最後に私のまとめで終わりました。

こんな調子で、この1週間は、G7サミットとグローバルヘルスで過ぎていきました。

ところで、私が去年11月にトロント大学のMunk School of Global Affairsで講演をしましたが、そこには「G8/20」の検証をしているグループがあり、そこから今年のG7サミットへ提出する資料の中に、私のコメントも掲載される予定になっています。

いろいろと忙しい1週間でした。

トロントからドーハへ

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トロントからモントリオール経由でドーハへ。恒例のカタール財団の Annual Research Forum に参加しました。この第一回のフォーラムには、選考委員として参加したこともあるのです。

そこでは、慶応の湘南キャンパスSFC卒業生の関山さんが始めた、蜘蛛の糸を遺伝子工学的に作るというベンチャー「Spiber」の一行にお会いしました。彼は、慶応の生んだ俊英の一人、冨田勝さんのお弟子さんの一人です。Spiber は私が慶応の湘南キャンパスSFCで教えていた、2010年の研究発表会で注目していた会社です。このチームとは夕食の機会を持って、いろいろと意見交換ができました。

意欲ある若い人たちの行動には、いつも嬉しくてわくわくしますし、何かできることは何でもするよ、といった風になりますね。がんばれ Spiber 。

国際交流には、国家間のお付き合いは大事ですが、普段からの「人」と「人」とのお付き合いからの信頼関係が、とても大事な役割をしていることは、重要な視点です。

再びトロントへ

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コーネル大学からトロント経由で帰国しましたが、3日後には再びトロントへ来ました。

カナダと日本のイノベーションと、この二国間の協力課題をテーマにした議論です。お互いにあまり注目されていないという意見がいくつも出てきました。なぜでしょうね。基調講演は、BlackBerryの共同創業者Jim Balsillieさん。主賓のテーブルで隣どうしでしたので、いろいろと話が弾みました。

2007年、京都でのことですが、私はもう一人の共同創業者Mike Lazaridisさんの基調講演の司会をしたことがあるという話から始まり、2008年にようやく日本でもBlackBerryが個人顧客にも使えるようになって、私もすぐに使い始めたことなどを話しました。今回の彼の講演では「Freedom to Operate」というキーワードを強調していることなど、いろいろな話題がありました。門司大使もレセンションに参加されました。

ところで、この会議の主宰はCIGIという比較的新しいシンクタンクで、Balsillie School of International Affairsとともに、彼が創立した組織です。

私はカナダとはいろいろ交流もありますし、落ち着いていて、なかなか素晴らしい国と認識しています。大英帝国との歴史的背景を持ったオーストラリアとは、資源大国という点では似ていますが、かなりの違いがあります。これは寒い環境という背景もあるのかもしれません。

私は、日本とカナダの人口は「約4対1」、そして隣にはそれぞれの人口の約10倍もある巨大国がある、そして、隣国との歴史的な背景はあっても、それぞれの「良さと、弱さ」の組み合わせは、これからの世界で新しい可能性があると思っている、という点をコメントしながら、これからの世界を俯瞰した視点からの意見を話題にしました。

最後に、通商大臣 Minister of Trade のChristia Freelandさんが講演されました。ジャーナリストとしてのキャリアもすごいもので、さすがに質疑応答は素晴らしかったです。

ここで紹介するBalsillieさんや、Freelandさんのような方は、日本ではまずめったに出てこない。このような点は、カナダの強みだと思います。