野中郁次郎さんとの対話: UCB-UCLA同窓会のイヴェント

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日本のイノベーションの大御所ともいえる野中郁次郎さん。世界的にも高く評価され、私も尊敬している学者です。多くの素晴らしい著書があり、私もいくつも好きな本があります。「失敗の本質」、「イノベーションの本質」、「イノベーションの作法」、「美徳の経営」などなど、調査分析と聞き取り、そこから「ことの本質」を見つけていくところがすばらしいのです。

つまり、先生の本や講義では、通常のビジネススクール的な分析と「ノウハウ」だけではなくて、むしろ本質を追及する人間らしさに裏打ちされた「リーダーシップ」と「共通の哲学」の追及があるからだと思います。いわゆるアリストテレスの言っている「フロネシス」の大切さです。言って見れば、日本のPeter Drucker的な方です。事実、野中さんは「First Distinguished Drucker Scholar in Residence at the Drucker School and Institute, Claremont Graduate University」 なのです。

以前からちょっとご相談していたことですが、野中さんがUniversity of California at Berkeley (UCB)の日本同窓会長になられ、私がUCLAの日本同窓会長ですので、色々な企画をご一緒に、とお話していたのです。

7月1日、それが実現しました。「3.11震災後のイノベーション」をテーマに「野中さんと私」の対談を企画しました。大勢の方の参加を頂き、とてもExcitingで盛り上がった会になりました。夕方6時半から開始で、レセプションが10時まで続きました。野中さんは明日から大連、ということで早めにお帰りになりました。

一橋ビジネスレヴュー、最近出た「夏号Summer Issue」 は「野中郁次郎大いに語る: 知識経営の最前線」が特集です。

私がまず30分、「Setting the tone」的に、私がこのサイトでも繰り返し述べている「3.11で世界に丸見えになった日本の強さと弱さ、その原因の本質」資料1)について話しました。

野中さんは、一橋大学「ビジネススクール」を立ち上げて10年、去年Harvard大学へ戻った竹内弘高さんとの共著論文「The Wise Leader」がHarvard Business Review、May issueに出たばかり。これで30分の話を始め、その後は参加者とも60分ほど質疑応答があり、とても知的興奮に満ちた時間が経っていったと思います。

野中さんも私も、知識ではなく、「リベラルアーツの大事」から感じ取っている志(こころざし)、思想と共通善といった価値観、そして実践、行動、判断から学ぶ英知、経験知といった点を強調していたように思います。

ちょうど「Voice」7月号が「菅政権、失敗の本質」という特集であり、その筆頭に野中さんが「リアリズムなき政治家が国を壊す」という論文を書かれています。野中さんは話の途中で、「3.11」以後、何故か「失敗の本質」の議論が盛り上がったんですよ、といわれました。「今回3.11 後の日本の対応は「失敗の本質」と同じことを繰り返している、「リーダー」たちは何も学んでいない」と私を含め何人かが指摘し、twitterなどで発信していましたよ、とお答えしました。

いずれビデオなどの形でこの対談をお見せできると思いますのでそのときにまたお知らせします。

参加者からもいくつものtwitterやメールをいただきましたし、またBlogにも書いていただいています。

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「This is Liberal Arts: Summer Course 2011」の発案者で去年この構想をBostonで始めた小林くんとその仲間の鹿野くん、さらに安居くん、UCLA OBの横山さんたちと、その後一杯(写真)。

皆さんと充実した数時間で一日が終わりました。