原子力発電の国際入札で韓国の勝ちについて、私なりの現地のソースからはどんな受け止め方だったのでしょうか?大体、以下のようなものでした。
1. 「予想はしていましたがショックな結果です。あらゆる意味でSYSTEMの塊である原発プロジェクトを10%も安く韓国が提示、その信頼をかちえたことは日本の産業競争力の低下の現実でしょう。日本企業はPresentationで技術と機器の性能の高さばかりを強調、政府の安全管理、東電の操業能力にふれることもなくフランスの一体となった攻勢ときわだった違いがありました。この辺の認識の違い(技術信仰による「甘さ」)は、必ずしも発注側の期待とは整合していなかったようです(時間をかけた「個人的な人脈」つくりの軽視)。この辺の認識の違いについては、あちらのトップから日本のトップへアドバイスがあったほどだと聞いています。」
2. 「韓国は国全体でがんばりました。世界の変化の現実を知るには若いひとが海外にでていき、また外国の優れた人に来てもらう、これしかないかもしれません。私の会社もアブダビでメガプロジェクトを韓国企業に受注されました。日本の人材の国際化を図る、これが今後の経営の核と確信しています。」
3. 「今回の受注は、韓電のみならず、他の分野(半導体、ICT, エネルギー(マスダール)、教育)においてもアブダビー韓国の協力強化にも結びつきました。」
4. 「今回の原子力協定のビッディングのポイントは以下の3点において、韓国が優れておりState of art の提案だったとの評価です。1) 競争的価格、2)完成までの時間が最短であること、3)原子力関係のUAE人材育成の支援、です。」
5. 「韓国の大統領は、状況に不安を抱いて11月中旬に大きなミッションを派遣し、その中枢には韓国の工科大学KAIST学長もはいっており、KUSTAR(資料1)、 はUAE内で原子力のプログラムを提供する唯一の大学と指定されたわけです。今後は韓国から原子力の教員が着任し、学生もKAISTへ送り込まれるでしょう。」
6. 「韓国はアブダビが今、何を必要として、どのような協力を欲しているのか、相手の立場に立って考えていました。人材育成がアブダビにとって、サバイバルの課題だと理解していたのです。だから、皇太子の心を掴むことができたのです。皇太子と韓国の大統領は携帯電話でお互い連絡を取れる間柄だったようです(この辺については「その1」の朝鮮日報にある通りです)。」
7. 「また、「韓国は原子力発電に必要な部品をすべて国産で生産することができず、海外に受注せざるをえないのではないか、」という指摘には、韓国原子力研究院の梁明承(ヤン・ミョンスン)院長は「造船や半導体などでも部品の100%を国産化しているわけはなく、必要な技術は海外のものを使っている。重要なことは韓国が設計、施行、メンテナンスなどシステム全体を輸出する能力を持っているという事実だ」と述べました。」
8. 「日本が部品の特殊性能にこだわって、それを「ものづくり大国」として自画自賛している様子と対照的でした。」
9. 「韓国がいかに国単位で一丸となりアブダビに攻勢をかけたかの様子が分かります。このUAEでの受注で自信をつけて韓国は、次はトルコ、東南アジアのマーケットへと動き出しているそうです。李大統領はもともと建設会社出身者とあり、アブダビに提出する企画書にも注文をつけたり、練り直しに自ら参加していたようです。」
それに比べ、その頃日本のトップは政権交代で国内政治にあたふたしていて、格段の差があったのだろうと言い訳もできます。鳩山さんは去年暮れに、インド訪問、「日本はインドの原子力の協力をする」(誰の振り付けか、、)と発言したようですが、気が付くのが遅かったですね。この発言は、これからどう発展するのでしょうか。
インドでも日本に比べると、韓国ビジネスマン(資料1)の活躍は良く知られていますからね、日本のクリーンエネルギー技術などと言っていても油断はできませんよ。
今回のUAEの事例を政府も企業も共有し、敗因を分析し(野中郁次郎先生も繰り返し指摘しているところです、、)、次への計画をしっかり練る、行動する、これが一番大事なことです。だからこそ、あえてこのカラムを書いているのです。
時代は、基本的には「ものづくり」ではなく「ものがたり」なのです。そして、「Demand-driven」に転換しているのです。