‘Nature’誌のMentor Award; The Crazy Ones

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Natureといえば、科学界で知らない人がいないほどの科学雑誌です。

このNatureが、4年前に「Mentor Award」 を開設しました。編集長のPhilip Campbellさんの趣旨に私は全面的に大賛成です。

私のカラムからも、この賞の趣旨と同様のメッセージがいくつも読み取れると思います(例えば今年でもありますね)(資料1)。日本の「タテ」構造の社会では、自発的に広い世界へ出にくいところもあり、新しい人材、新しい「芽」が生まれにくいことを繰り返し提言してきました。連続する他流試合と、若いときに独立する、独立させることの大切さです。

「Mentor」の大事さはあまり一般には認識されず、成果中心に科学者(えてしてタテ社会では組織のボス)の功績が評価されている嫌いがあるのが現況でしょう。それはそれで素晴らしいことです。

先輩研究者は、自分が指導する大学院生、あるいはポスドクの期間の研究を通して、若い研究者がどれだけ自立して、新しい分野を開拓し、自分を追い抜くような人材になっていくのか、これが研究指導にある人たちにとって、自分の研究もさることながら、極めて大事なことだからです。

今年のMentor賞は日本の番でした。「Lifetime Achievement」 と 「Mid Career Achievement」 の2つのカテゴリーです。そして、12月1日、東京の英国大使館で表彰の式典があり、Warren駐日英国大使、この会のために来日したPhilip Campbell、Nature編集長の挨拶に始まる楽しい会でした。素敵なパンフレットが配布されました。

「Lifetime Achievement」受賞の大沢文夫さん、「Mid Career Achievement」受賞の北野宏明さんソニー研究所)、心からおめでとうございます。大勢のお二人のお弟子さんも集まりとても楽しいひと時を過ごしました。

この選考に当たっては、どなたも甲乙つけがたい素晴らしい候補ばかり60数名の推薦がありました。和田昭允さんを委員長とする素晴らしい選考委員会の6人の1人に加えていただき、私はとても光栄に感じていました。

一番びっくりしたことは、選考委員会のことです。採点ランクが選考委員6人の間で、不思議なくらい違いがないのです。討論に入ると、皆さんが本当に申請書をよく読み通していること、「Mentor」の意義についての価値観に多くの共有点のあることでした。

次世代の若者の「とんでもない可能性」を引き出す、次代の常識から外れている素晴らしい「Mentor」たちに乾杯。受賞のお2人の哲学 (資料1)にもそれが現れています。

ところで、北野さんの自分の哲学でしょう、推薦書類に自分の好きな言葉、モットーとして以下の「一部では有名」な文が書かれていました。

The Crazy Ones」;  Here’s to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently. They’re not fond of rules. And they have no respect for the status quo. You can quote them, disagree with them, glorify or vilify them. About the only thing you can’t do is ignore them. Because they change things. They push the human race forward. And while some may see them as the crazy ones, we see genius. Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do.

北野さんは、自分はまだまだ十分に「クレイジーではないな」などといっていますけどね。

実は、「GEW-1」のカラムで紹介した私の基調講演「Entrepreneur = Change Agent」で、私はこの「The Crazy Ones」の1分ビデオを使おうと考えて、いろいろ工夫したのですが、ステージ、照明などの具合が上手くいかず、あきらめたばかりでした。