所 真理雄教授のコース、英語のメール

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8月24日のpostingでご紹介したSONY CSL所 真理雄さんですが、慶応大学の教授 (もともとそこからSONY CSLへ移ったのですが)もされていて、「イノベーション」のコースを理工系の大学院生を対象に提供しています。

お招きを受けて慶応大学の矢上キャンパスに講義に行きました。学生さん(修士課程、博士課程)は120 人ほどでしょうか、皆熱心で、質問の受け答えなどなど、大変に楽しい90分ほどを過ごしました。

終わりに、いつものことですが、Apple、iTune、iPod、iPhoneなどを作り出したSteve Jobs  の2005年のStanford大学での卒業式の14分のスピーチを見る、理解する、そして、私のサイトから、私にメールで、自分が何を感じたか、考えたか、を知らせるよう伝えました。

その日の夜には4つのメールが来ました。皆に返事を出しました。ところがそれ以後パッタリとメールが来ないのです。

3,4日待った後、ちっともメールが来ないので所さんに電話して、このことを話しました。所さんは「たぶん、黒川さんがそんなことを言っても学生さんは本気にしなかったのでしょうね」というので、「遠慮しないでメールをくれるように、と伝えてください」とお願いしました。数日たって、2日で50通ほどのメールがドドドッと来ました。いくつものメールは英語でした。

2晩ほどかけて、メールを読み、私のそれなりの返事を全員に送り、その旨を所さんにお伝えしました。一部のメールは面白いので所さんにもCCで送りました。半分徹夜の2晩でした。実にいろいろな意見、講義への反応など、とても私にもためになりますし、意見の交換は、また楽しいのです。

1週間ほどして一人の学生さんからメールで、「所先生からがおっしゃったのですが、黒川さんは全員のメールに返事した、ということですね。でも私は受け取っていません」とメールが来ました。あわてて調べてみると、確かにありましたね、返事をしてなかったのが1つだけ。結構の長さで、しっかりしたものでした。私の見過ごしを謝る事から始まる返事をしました。

ところで、いつものことですが、私のメールは殆ど英語です。日本語のメールにも英語で返事するのです。所さんが私を紹介するときに、「黒川さんのメールはいつも英語だよ」と紹介してくれたので、英語でトライした学生も結構多かったです。

ところで、私はなぜメールで英語を使うのか。決してキザでもなんでもないのです。主として4つの理由です。大体、私はblind touchではありませんし、タイプは早くないのです

1.日本語で返事を書くのは、文字変換等に時間がかかること。
2.単語、フレーズでも一つのキーの打ち間違えで、そこを全部やりなおしたり、時間がかかる。
3.英語だと、ちょっとしたスペルの間違いなどあっても、結構、意味が通じるので、キーの打ち間違いをそれほど気にしなくていい。
4.それから、これがもっとも大事なのですが、言葉は文化の背景がありますから、日本語だと、社会の地位などの「タテ」関係で、趣旨に入る前に、結構ながながと挨拶など、「ご無沙汰しておりますが、、、、」等々、かなり丁寧に書かなければならない、ということなのです。したがって、何が趣旨なのか時々よく分からないこともあります。英語では、それなりに丁寧な使い方もあるでしょうが、基本的に個人レベルの関係が「対等」ですから、ストレートに用件に入ってもあまり失礼にならないのでポイントがすぐに分かるのです。特に日本のようなタテ社会では、上下関係、師弟関係等もありますし、私と学生さんをはじめとして、私にしてみれば、私より若い人たちとの交流が大部分ですから、この方があちらも気を使わないでもいいと思うからです。でも、皆さん結構、英語で書くのが苦手のようですね。慣れてしまうことです。

メールに英語を使うと、スペル間違いなどあまり気にしないで、要点をすっきり書けるところに利点があるのです。そして、英語では表現がツイツイ直接的になりがちですね。これはそれなりに、注意する必要のあるときもあります。

天才・異才が飛び出すソニーの不思議な研究所

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これは最近の本のタイトルです。

著者は「所 真理雄、由利伸子」、本の帯(オビ)には「北野宏明  、茂木健一郎高安秀樹暦本純一 らを生んだ「夢のラボ」の秘密、ソニーコンピュータサイエンス研究所」とあります。ここにある「名前をどこかで聞いたことのあるのではないだろうか?」

「北野宏明は、、、ペット犬AIBOの生みの親の一人、、、生物学の新しい領域「システムバイオロジー」を切り拓き、その第一人者、、、茂木健一郎は、「クオリア」、「アハ体験」といった脳の働き、、、斬新な視点と鋭い考察が、もじゃもじゃの髪、おっとりとした童顔、、、出版、テレビ、ゲームと、メデイアの寵児、、、高安秀樹は、、、「フラクタル」はベストセラーに、、、「経済物理学」を起こし、現在この分野の研究は世界に広がっている。暦本純一は、、、実世界とネット世界を自然に融合させる技術を次々と開発し、、、この4人は皆同じ研究所の仲間で、、、(第1章から p. 11)」

これは「ソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL)」の生い立ちから今までの20年を、その創設からかかわり、天才、鬼才を輩出した所 真理雄さんを書いた物語です。所さんはご本人も「鬼才、変人」、だけど優れたマネジャー、素敵な方です。「変人」は子供のときからのようで、「トコロ・ヘンジン・マリオプス」といわれていたとか (第1章から p. 78)。

時代を変えるいくつもの新しい分野を開拓し、世界に新しいコンセプトを提示する、これだけの数の「変人」を輩出するこの研究所SONY CSLは、スタッフを入れても30数人という小さな組織。これら5人のほかにもユニークな人たちがいろいろ出ている。

所さん、北野さんとはこの数年いろいろとお付き合い (資料) があります。いつも楽しいけれど真面目な話ですが。お二人を含めて、素晴らしい可能性を持った若者がたくさんいること、それを伸ばす「場」の設定が大事であること、事の本質を見つけ、本物の価値創造と発見の楽しさと厳しさを感じ取ることができる等々、物語が素晴らしく、とても素敵な本です。所さんの科学への哲学とマネージメントの優れているところでしょう。共著の由利さんの物語りと物書きぶり手腕はたいしたものです。

本の章立ては;
1. 一日で書き上げたドラフトから始まった
2. コンピュータサイエンスの最前線をいく
3. 研究マネージメントの真髄とは
4. コンピュータサイエンスからの脱却
5. より広く、より深く
6. 私にとってのソニーCSL
7. 科学の未来とソニーCSL

2章; 「所はいう。「僕の仕事は二つしかない。一つは研究所の向かう方向を決めること。もう一つは人材のマネージメント。ここに合う人を採ること、ここを卒業する人の手助けをすること、そしてここに合わない人には辞めてもらうこと」。」(p.62)

3章; 「何もまして評価されるのは、新しい学術分野を作ること、新しい文化を作ること。これができれば、ソニーのブランド価値を飛躍的に向上させることはもちろんのこと、人類への貢献という意味でも計り知れない」。(p.75)

「所真理雄のマネージメントは「日本標準」からはっきり外れていた、、、「なんと無茶な」と言われることがしばしば、、、だが、「その無茶も長年蓄積してくると黒光りしている、まったくユニークな研究所に仕上げたものだ。こんなことは民間だからできた?いや民間じゃ無理だ、よくやった」。」

「所の素直さ、ストレートさについては定評がある、、、担当した編集者、、にも、「所さんは直球一本」といわれたという。」

4-6章では、所さんと北野さんをはじめとする研究者とのいきさつ、出会い、考え方等々、実に興味深い。皆さん事の本質を見ている。若い研究者、いや研究者でなくともそれぞれの「生き様」の問題として、ぜひ皆さんにもこの本を読んで欲しいところだ。

北野さんは言う、「一見かけ離れた分野間のシナジーは、各々の分野の根幹の概念を理解しないと進まない。しかし、その幅広さが、新しい領域や深い自然理解へと達する唯一の方法だと着たのは思っている、、、「コンピュータの発達で、多くの要素の係わり合いからなる複雑なシステムをいろいろと扱えるようになった。その結果、情報科学、バイオ、社会学、経済学といった分野の壁を越え、横に貫くような視点や方法論が浮かび上がってきて、新しい学問体系が開けつつある」という北野の言葉が、この後に続く七人(脚注1)の研究から実感されるだろう。」(p.119-120)

脚注1; 暦本純一Luc Steels高安秀樹茂木健一郎桜田一洋Franc NielsenFrancois Pachet

陰で支えるスタッフの2人の女性の意見として、「研究員の発表には参加している、、、発想の仕方や着眼点に、すごいと思うことがたびたびある」、「研究者の言葉の端々から、、、刺激を受ける」、「研究員たちは、皆、穏やかで優しい、、、会社や日常の常識にとらわれない面は多々あるが、研究以外のことに対しては本質的にやさしい」と。(p.226-227)

所さんの哲学には、可能性をもつとんでもない「変人」を見つけ、思い切って伸ばしてみる「場」を造ることにあると思う。これは所さんが、若いとき英米でもいくつかの研究所ですごし、一流の人たちの中にいたことにも関係しているように思える。だからこそ、この研究所SONY CSLは「、、、フレッシュPhD、、、新米の研究者でも自分と同等だとして扱い、フェアでオープンだが、手加減もしない、、、こういう雰囲気は、、、一切のごまかしや、なあなあの無い、非常にピュアな精神の表れでもある、、、」、「、、どんな権威のある先生の前でも、その先生に何を言われようとも、ソニーCSLのメンバーは怯まない」といわせる。(p.216-217)

7章で、所さんはこれからの課題へのあり方として「オープンシステムサイエンス」 を考え、今年初めに同じタイトルの本 を20周年記念として出版している。

とにかく、研究に興味がある、何か面白いことに興味がある方たち、そして学生、大学院などの若者たちには、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

そして、私がこのサイトでも繰り返し指摘(このサイトで「変人」「出る杭」「常識」「非常識」などで「Search」してください)していることですが、時代の「変人」、「出る杭」、「非常識」こそ、フロンテイアを開拓し、新しい価値を創造し、世界を変えるのです。この本で紹介される何人もの研究者の物語からも、このことを改めて確信しました。

沖縄へ、アジア青年の家、インフルエンザ、そして沖縄科学技術大学院

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8月20日、沖縄に来ました。

去年に始まった「アジア青年の家」(資料1)へ参加です。去年も報告しましたが、アジアと日本の若者たちが、沖縄で約3週間、一緒に過ごそうという計画です。今年の参加者は海外から35人(15カ国)、日本は42人(そのうち沖縄から14人)です。15、16歳が中心です。こういう交流プログラムをもっともっと広げて欲しいです。若いときの同世代との交流の実体験こそが、未来への広い視野をつくり、友人の輪を広げる。特にグロ-バル時代には、人材育成への大事な要件 (資料1)という認識で世界も動いています。

去年、Tutorとして参加してくれたアジア太平洋大学の学生も6人が参加、また琉球大学、沖縄大学の学生さんも参加してくれました。

ところが、沖縄はインフルエンザが急増し、3人の死亡者が出たところでしたので、現地についてみると、はたして発熱で休んでいる参加者もいました。「グローバル時代とイノベーション」が私のテーマでした。今年のプログラムには「水」をテーマにしたセッションが複数あり、参加者たちがグループ別に「水」問題についてそれぞれが違った視点で議論したようです。そこで、まず各グループが「水」についてどんなテーマを取り上げたのかを聞き、「水」を中心に対話形式で討論しました。

皆さん、元気でいいですね、楽しいです。全体のプログラムも盛りだくさんで、セミナー、島への移動、シュノーケリング、ホームステイ等など、もう少しゆとりがあったほうがいいようです。この年頃の若者たちの面倒を見るのは大変でしょうけどね。

去年参加のAPUのAnanda Ivannanto君、(彼は発熱で、私のセミナーには参加できず、残念)などの大学生たちが、自主的にウェッブサイトやFaceBookなどのNetworkを作成したりしているので、このような活動をさらに広げるよう応援したいです。

去年も報告しましたが、日本の参加者は男子生徒と女子生徒 の比が、またまた「1:2」でした。男子生徒の参加希望者が少ないのです。なぜでしょうね。

翌日は、沖縄科学技術研究大学の建築現場へ行きました。立派な建物が立ち上がりつつあり、これからが楽しみです、勿論いろいろ難題はあるでしょうけど。

グローバル時代への教育改革者

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リーマンショックの後、当初の国内の予測と違って、鉄のトライアングルが始まった「55体制」が行きづまったからなのか、日本の経済の調子が予測以上に悪く、産業構造の脆弱さが表面化しています。こうなると定番ですが、「“坂の上の雲”的」な明治人の活躍を懐かしむような「リーダー論」が出てきます、ずいぶん状況も見当も違うと思うのですが。

世界の変化は日本を待ってくれるわけではありません。5、10、20年先のことを考えれば、将来を担う人材の育成こそが国家政策の根幹であることは明白です。このサイト内で「人材育成、人づくり」などで「Search」してください、数多く出てきます。

日本では教育に対する国の予算は先進国で際立って少ないのです。今回の衆議院選挙になって、マニフェストでようやく「子供、教育」などへの予算が出てくる有様です。

しかし、従来の教育予算の増強は大事ですが、グローバル時代をよく見据えながら新しい、将来へ対応する多用な人材を輩出する思い切った施策こそが大事です。このような変革が、大学レベルにさえもあまりにも小さく、オズオズといった感じであるところがわが国の現状でしょう。このことについても、このサイトで何回も指摘(資料)しているところですし、いくつかの思い切った試みはありますが主流になるにはほど遠いというところです。アジア太平洋大学、秋田にある国際教養大学などの活動は国内でさえ殆ど知られていません。一橋大学大学院国際経営戦略コース は世界へ開かれた、世界でも評価の高い画期的なプログラム です。

ところで、多くの英米の大学での改革、さらにネットなどの情報技術を使った教育手法にもまったく新しい可能性が模索され、実践が進んでいます。その点で、先日ご紹介したMITのOpenCourseWare の開発にかかわったMiyagawa宮川さん、新しい可能性を探っている、最近Carnegie Foundation からMITへ移ったIiyoshi 飯吉さんなどの海外の大学で活躍する日本人がいます。

飯吉さんには去年ドバイでお会い(資料) したのですが、最近、Vijay Kumarさんとの編集による「Opening Up Education」 を編集、出版されました。書評もCharles Vest (長年にわたりMIT学長、私のサイト内でも「Search」してください)などによって高い評価を受けています。

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写真: 飯吉さんと私、GRIPSで

最近、飯吉さんとご一緒する機会がありました。世界の教育は「Flat化」する世界でとてつもなく大きな改革の可能性さえ出てきているようです。このグローバル時代へのチャレンジ精神、チェンジ変革へ若者の可能性 をのばし、ビジョンと強い意思とエネルギーでリーダーシップを発揮する政治、企業、大学など、グローバル社会でのリーダーの育成に余念がありません。このような人たちが新しい時代を担い、これからの世界を動かしていくでしょう。宮川さん、飯吉さんの教育改革への情熱と先見性と実行力には素晴らしいものがあります。

宮川さん、飯吉さんたちのような「外」で活躍し、「外」から日本を見ている素晴らしい愛国心(脚注)あふれる教育者の意見を、ぜひ広く聞いて欲しいものです。

脚注:私の考える愛国心は「Patriot」です、「Nationalist」ではありません。日本語での違いはややあいまいですが「愛国心」 vs 「国家主義」でしょうか。

Asian Innovation Forum

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出井伸之さん は、グローバルに活躍するビジネスリーダーの一人です。わたしとは哲学も時代の認識も共有するところが多く、SONY会長を退任した後はご自分で新たな挑戦である投資ファンド「クオンタムリープ」(資料1)を立ち上げ、周りには素晴らしい若い人たちが集まり、新しいビジネス、起業支援などに力を入れています。ビジネス界の先輩として本当に素敵なことです。

多くの活動の一つとして、2007年にAsian Innovation Forum を立ち上げ、私も微力ながら参加、応援させていただいています。2007年の会は他の予定があって欠席しましたが、去年は参加。大きな盛り上がりを感じることが出きました。

今年は9月14、15日に東京で開催されることになりました。一橋大学経営大学院研究科長、ダボス会議などでよく知られている竹内弘高さんと私はシニアメンバーですが、出井さんのビジョンを共有しつつ、計画も議論も若いメンバーが中心で、なかなか楽しいのです。

私のこのサイトの中でも、「出井」、「竹内」で「Search」していただくと、いくつも「ヒット」します。

最近の日経新聞にも開催広告 が出ましたが、このようなネットワークから新しいビジネス、成長のエンジンが出て欲しいと心底から願っています。

「個」人力を磨き、世界への意識の高い、そしてどんどん広がるネットワークを築く、エネルギーに満ちた素晴らしい若い人たちがどんどん出始めていることを実感します。このような人たちの一人ひとりが、これからの日本にはとても大事だと考え、大いに応援したいのです。