シンガポール、沖縄、そして若者のエネルギー

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お盆明けの20~22日はA*STARの理事会のため、Singaporeへ。場所は新しく開設されたFusionopolis(10月に開所の式典があります)、いよいよバイオを理工学分野と融合させようという意欲的な試みが始まります。理事会の開催された21日の夜は貢献者たちの表彰式が威勢よく開催され、Guest of Honorで産業担当大臣も出席されました。とにかく意欲と元気があり、研究者も事務方も、多くの若者がバリバリ活躍しています。

24日は沖縄へ。「アジア青年の家」プログラムに参加しました。私たちの提案から始まった、アジア諸国と日本(沖縄と本土)の若者(14~17歳)が80人ほどで、沖縄で3週間を一緒に過ごし、交流しようというものです。「ハイサイ日記」に楽しそうな写真と日記が満載。このプログラムの基本精神は私のメッセージにも読み取れると思います。

この日は「科学者シンポジウム」に参加しました。東北大学で脳研究をしている大隅典子さん、琉球大学理学部長でサンゴ研究で知られる土屋さん(去年は太平洋科学会議で大変にお世話になりました。いまはこの学会の事務局長もされています。)、住友化学でこのブログで何回も紹介しているOlycetNetというマラリアに有効な画期的な蚊帳の開発にかかわった石渡さん、司会は御茶ノ水大学の塩満さんで行われました。参加した学生さんたちは、皆さん元気いっぱいとても楽しそうで、うれしかったです。共通の言語は勿論、“Broken English”。

大学生も何人かお手伝いをしてくれました。大分にある立命館アジア太平洋大学の留学生たちです。若いときのこのような交流は何にも増して視野を広げ、違いを認め、広い視野と友情を育てることでしょう。参加した若者たちの10年、20年先の将来に何が出てくるのか楽しみです。わくわくします。もっともっと、各地の学校でこのような活動、夏休みの交換ホームステイなどを自発的にはじめて欲しいものです。

パネルの終了後すぐに飛行場へ向かった大隅さん、当日の夜に早速blogで発信しています。写真も、お話もうまいものです。

私は内閣府の主管する沖縄総合事務局長の福井さんと、沖縄全島「エイサーまつり」を見に行きました。特に「琉球国祭り太鼓」は素晴らしかったです(写真)。その後は夕食へお招き受けました。

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皆さんありがとう、お世話になりました。

企業トップの人事、門外漢の素朴な疑問?

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日本経済新聞の「領空侵犯」というコラムの取材を受けました。インタビュー記事ですが、専門外のことについて素朴に疑問を呈してもらうという趣旨のものです。私なりのテーマがいくつかありましたが、企業統治の一面を取り上げてみました。2008年8月4日の朝刊5面に出た記事は“経営者に「任期」は不要-能力・実績に応じて決めよ-”というタイトルでした。記事は以下のように進みます。カッコの中が私の発言の要旨です。

■企業経営者の「任期」について疑問をお持ちとか。
「昔から、社長の在任期間は二期四年とか三期六年までといった慣例や、内規が存在する企業が多いようです。でも、それに何の意味があるのでしょうか。任期をあらかじめ決めておいたからといって、これまでの日本企業のガバナンス(統治)がしっかりしていたとも思えません」

■最近、大企業トップの在任期間は短くなる傾向があるようです。取締役の任期を従来の二年から一年に短縮する企業も相次いでいます。
「経営者の任期をあらかじめ短く設定してしまうと、目先のことしか考えず、長期的な視野に立った経営ができなくなるのではないでしょうか。それにもし自分の在任中に何か問題が起きたら、自分で解決しようとするより問題を後継者に先送りするようになります」「これは役所や、かつて私がいた大学の世界でも同じことです。役人は次々とポストが替わるから、問題については自分で何かするより先送りしようとする。大学の学部長や学長も任期が短いために、長期的な視野に立った人材育成ができません」

■逆に、経営者の在任期間が長期化することの弊害や「老害」批判もあります。
「『老害』を言うなら四十歳代の若いうちに社長にすればいいだけの話でしょう。そうすれば社長を十年やってもまだ六十歳前です。シャープやホテルオークラなど四十歳代の方が社長になった例もありますが、日本の大企業には若い経営者が少なすぎます。リーダーに必要なのはビジョンと、そのビジョンを人に伝える能力、知力と体力、それに揺るぎのない信念。年齢は関係ありません。もっと若い人材を抜てきすべきです」「それに『長期政権』はすべてダメなわけではありません。ソニーの盛田昭夫さんのように、長期間にわたって素晴らしい手腕を発揮した創業経営者は日本にもたくさんいます。サラリーマン経営者でも、長期政権で優れた業績を残せる人はいるはずです」

■問題なのは在任期間の長短ではないと。
「最初から任期を決めておくのではなく、その経営者の能力と実績を客観的に評価して、問題があればすぐに辞めさせる仕組みを作っておくことの方が重要です。でも実際にそういう仕組みが機能している日本企業がどれだけあるでしょうか。いったん就任したら慣例の在任期間を全うするまで辞めさせることができないのなら、ガバナンスが存在しないと言われても仕方がないでしょう」

■もう一言
大学教授は、いったんなれば定年まで身分安泰。これもおかしい。

■聞き手から
経営トップをどう選び、どう評価するのか。企業統治の根幹にかかわる重要な問題だ。帝人や花王など、社外の油脂記者や社外取締役が社長後継者の選出を審議する例もあるが、こうした先進的事例はまだ少数派。経営トップのあり方について黒川氏が抱いた素朴な疑問に、日本の経営者たちはどう答えるのだろうか。(編集委員 宮田佳幸)

この記事の内容についてはいろいろと意見、言い分はあるでしょう。もっと長くお話ししたのですが、少ないスペースでまとめていだきました。しかし、このグローバル経済の時代に自分たちの理屈だけでは通用しないと思います。特に世界第2の経済大国の企業なら、なおさらです。企業の信用、国家の信用でもあります。情報の時代、透明性を担保した企業統治は会社の価値の基本と思います。企業に限ったことではありませんが、隠そうと思っても世界から見えているのです。これが「フラットな時代」の怖さです。

さてそこで、この記事についての議論が日経ネットPLUSにいくつか出ています。これらは会員登録(無料)すれば見ることが出来ます。皆さんはどうお考えでしょうか。

再びNew Delhiから

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今年2回目のNew Delhiです(参考 12 )。今回は去年に続いてJeffrey Sachsを団長とする厚生大臣諮問会議です。2日間に渡っての開催でしたが、2日目には厚生大臣のRamadossさん、そして諮問委員と、“サシ”で3時間ほど議論しました。大臣は一つ一つのコメント、質問に実に的確に回答があり、明確な問題の認識と計画をお持ちだと感じました。ご当地での報道の内容はこちらのサイトで見ることができます。

ここ3年のインドの地域(農村部、貧困部ですが)医療行政の成果は確実に現れはじめており、経済成長とともにさらに予算も増えることが期待されます。インドの医療費はGDPの1%と極端に低くく、例外的な国なのです。多くの問題を抱えながら更なる向上が期待できるでしょう、道ははるかに遠いですが。インドの地方部の医療政策は貧困国での参考になることが多いと思います。

去年同様、医療政策機構の原君も同行、友人であるローマクラブ会長のAshok Khoslaさん、Sunil Chackoさん以前にも紹介しています)たちを夕食にご招待(写真1)。楽しいひと時を過ごしました。また、Indira Gandhi Naitonal Open UniversityのPro-Vice ChancellorのMishraさんとChackoさんのご紹介で、労働大臣のOscar Fernandesさんにも面会に行く機会がありました(写真2)。夜の10時でしたが、多くの人が面会に待っていて、まだまだ仕事だということでした。彼はそういう方だそうです。

Img_0002写真1 Khoslaさん(中央)、Chackoさん、原君たちと

Img_0008写真2 右からMishraさん、Chackoさん、Fernandos大臣と

アジアの医学生たちへ: 若者へのエールと3つのスピーチ

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AMSC(Asian Medical Students Conference)というアジアの医学生たちの集まりがあります。毎年、会議を開催し活動を展開していますが、私も過去3回ほどお招きを受け参加しました。毎回とても楽しいです。私はこういう若者主催の会が大好きです。みな将来を担う人材、人財ですから。今年は第29回で、東京で開催され、閉会式でお話をさせてもらいました。400人ほどの参加だったそうです。私の話の要旨は、この29年間に起こったものすごい変化とグローバル化時代について、そして「3つのスピーチ」の話をしました。

3つのスピーチの話とは、webでも観ることのできる3つの講演、Steve Jobsが2005年にStanford大学の卒業式で行ったスピーチ(この機会に集まった皆さんにとって、この会での1週間がキャリアの「dot」のひとつになるだろうことを楽しみにしていると伝えました。)、Bill Gatesが2007年にHarvard大学の卒業式で行ったスピーチ(世界の、そして社会の不平等“Inequity” への認識、意識について。)、そしてRandy PauschのCarnegie Mellon大学での「Last Lecture」(子供のときからの「夢」、多くの問題を抱えてもみんなが医師になることへの「夢」を持っていたことを忘れないようにということ。参考 1 , 2 )です。

皆さんもwebでこれらのスピーチに触れてみてください。それぞれがすばらしいスピーチです。Pausch教授の「Last Lecture」は本にもなり、つい数日前に日本語訳本も出たそうです。

この会を組織した学生の皆さん、ご苦労様でした。本当にすばらしい会議でしたね。