Global Health-2

→English

2月16日の午前は、私たちのNPO Heath Policy Institute(HPI)が例年行っている「医療政策サミット」を開催しました。理事や顧問の方たち、それから普段からお世話になっている方々をお招きして、わが国の医療制度をめぐるセッションを行いました。

そして午後は、これまで3年間のHPIの活動の経過を踏まえ、「Global Health Summit: Advancing our promises for TICAD/G8 and Beyond」というテーマで、国際会議を開催しました。司会はNHKの道傳さんです。

基調講演は小泉純一郎元総理の「健康と環境」というテーマでした。さすがにお話が上手くて、皆さんを惹きつけていました。原稿なしで、時間はきっちり30分。脚気から、食生活の変化、長寿社会となった日本、そして「変人」は“eccentric, crazy”ではなくて“extraordinary”という話、三浦安針・William Adamsと壊血病の知識、2日前に宮古島へ行って見たサトウキビから作るバイオエタノールと石油業界からの抵抗の話等々。参加者の半分は海外の方でしたが、素晴らしいオープニングでした。

1

写真1 小泉元総理の講演

2_4

写真2 世界銀行のPhumaphi副総裁

緒方貞子さんはアフリカへご出張中で、ビデオで挨拶をされました。ついで世界銀行副総裁の一人Phumaphiさんの講演、パネルはDevelopment Bank of South Africa、そしてGAINを率いるJay Naidooさん(今年のダボスでBonoたちと行ったセッションでお会いしました)、このブログで何度も紹介しているGates財団のDr. Tachi Yamada、マラリアにすばらしい効果を挙げている蚊帳(Olyset Net)で世界的にも有名な住友化学の米倉社長、日本の本格的なNPOの元祖ともいえる日本国際交流センター山本正理事長、そして世界銀行のWashington DC本部で活躍している前田明子さんという豪華なメンバーで、実りの多い議論が進みました。多くの日本の方たちにはアフリカでの日本の貢献など、新しいことも多かったと思います。そして、外務省の鶴岡審議官がTICAD、G8サミット等への日本政府の考え方等について話をしました。締めくくりはサミットの開催地である洞爺湖が地元の、民主党 鳩山幹事長からのビデオメッセージでした。

3

写真3 パネルで、手前からNaidooさん、Yamadaさん、米倉さん

4

写真4 パネルで、手前から道傳さん、前田さん、山本さん

それぞれがGlobal Healthを考える世界のリーダーたちです。Naidooさんは日本が大好きという13歳のお嬢さんを初めて日本に連れてこられたということでした。

レセプションも大いに盛り上がり、TICAD、G8サミットの主催国である日本への期待の大きさが感じられました。

翌日17日(日)は、G8 NGO Forumの主催で、日本でGlobal Healthの分野で活動をしているNGOの方たちとの意見交換の場が設けられ、これも実り多いものでした。

いつも言っていることですが、今年の日本は5月のTICAD、7月のG8サミットと、世界の注目を集める大事業があり、特にG8サミットは日本での開催が最後になる可能性が高いと思います。そういった面でも、今回の会議は大変にタイムリーで、実りの多いものだったと思います。

HPIという独立したシンクタンクが、世界銀行、外務省、財務省、厚生労働省、Gates財団等と協働して会議を開催することは、必ずしも官主導ではない形で政策にかかわる、開かれたプロセスです。グローバル時代の日本の方向性を垣間見せたような会議であったと感じます。

参加して頂いた方たちに心からお礼申し上げます。また企画・運営に参加した人たち皆さん、ご苦労様でした。

(写真撮影:工藤 哲)

Global Health-1

→English

グローバルな世界では、超大金持ちが出る一方で、貧しい人たちは、極めて貧しくなります。今、世界の66億人の約20%が超貧困“extreme poverty”で、これらの環境にある人たちは、出産時の母親の死亡率も高く、乳幼児死亡率、そして5歳までの死亡も高いのです。

毎年数百万の人たちが飢餓、そして栄養失調とそれにかかわるいろいろな病気で命を落としています。特にアフリカと南アジアの貧困は悲惨なものです。気地球温暖化の意識の変化とともに、バイオフュエルの生産が増え、とうもろこしや小麦の値段が上昇し始めています。世界はとんでもない危機的な方向へ進みつつあります。「2C」=「Climate Change」と「3F」=「Fuel, Food, and Feed」は、貧困に窮する人たちへの影響が極めて大きいのです。これらがグローバルな人間社会に大変化をもたらしつつあります。

2月15日には「Global Health: Under-Nutrition」をテーマにして世界銀行、Gates財団、厚生労働省、財務省、外務省等の後援をお願いして会議を開催しました。Gates財団のGlobal Health InitiativeのPresident、Dr. Tachi Yamadaと私が、それぞれclosing remarkとwelcome remark を行いました。昼食時にはGhanaの厚生大臣の素晴らしい講演がありました。

また、医学界の超一流雑誌であるLancetが、今年1月から世界のNutritionの特集を始めました。できるだけ多くのEvidenceに基づいたデータから、問題を見つけ、何を、どうしたらいいのか、ある種のデータ作りでもありますが、どのような行動を起こせるかが課題ですね。

日本はモンゴルにヨード入り食塩を配布するなど、日本らしい、草の根ODA運動をしています。

学校給食はいいのですが、生またれての1~2年間の栄養、必須要素の補給(ヨード、鉄等々)が大事なのです。特に生まれて6ヶ月は母乳を基本とするべきで、1~2歳のころに摂取する栄養が少ないとその後で、学校の成績はどうしても悪いとか、社会人になっても仕事がない、あまり稼げない、収入は低いといった社会的地位が固定することになるのです。いろいろと子供たちにはかわいそうな結果が多く、国民の生産性に大きな影響を与えることからも、これらの栄養に対する対策は大きな問題なのです。

この一日の会議では啓発されるところも多く、なかなかよかったと思います。

明日は2日目です。

国境なき医師団

→English

国境なき医師団(MSF:Medecins San Frontieres)のことは皆さん聞いたことがあるでしょう。この医師団は1971年にできたのですが、もともとはその前からフランスにある救急医療制度(SAMU)から発展したもので、そのきっかけとなった一つがBiafra, Nigeriaの大飢餓だったそうです。1999年にはNobel Peace Prizeを受賞しています。立派な活動で、日本の医師たちも数多く参加しています。

2月1日のことですが、この医師団の立ち上げに関わったDr. Xavier Emmanuelliが、同僚のDr. Tartiere、そしてFrance大使館のY. Miauxさんたちとお見えになりました(写真1)。話題は、いろいろと広がりましたが、日本でのホームレスにも関心がおありで、山谷に行かれたそうです。

Msf04写真1 Dr. Xavier Emmanuelliと。左はDr. Tartiere、中央はMiauxさん、左にFrance大使館のスタッフ

私的なことで恐縮ですが、私の娘はアメリカで医師をしていますが、2006年4月から6ヶ月間、Liberiaの奥地へMSFの活動で行っていました。医師は彼女一人で、電気も1日2時間程度しか使えないのです。この国は2005年11月に選挙が行われ、初めての女性大統領 Madame Ellen Johnson-Sirleaf(2007年のダボス会議でお会いしました)が選出され、ようやく治安が回復し始めていた頃でした。MSFは現地の安全はある程度確認したうえで医師を派遣するのですが、娘もよくも行ったものですが、何事もなく無事に戻り、ひと安心。得がたい経験をしたといっていました。そこでは日本の若い人たちにも会うことがあったそうです。日本の若者も捨てたものではありません。

私もその年の6月にKenyaのNairobiに行きました。今、暴動で話題になっているNairobiのスラムKiberaに行ったのですが、その時は、ホテルから携帯電話で「Liberiaはどうか」と話し、メールのやり取りもしました。便利なものですね。

思いがけない出会い

→English

先日、ダボスからの第4報で、最終日の夜に行われたコンサートで、世界的なViolinistの諏訪内晶子さんが素晴らしい演奏を世界のリーダーの皆さんに聞かせてくれたことを書きました。帰国してしばらくして、突然、諏訪内晶子さんからメールが届き、「ダボス会議での演奏会にいらしていただいたことを、ブログで知りました。今度日本で公演しますので、是非お招きさせてください」と。うれしいやら、びっくりです。

そのYury Bashmet(conductor and Viola) and Moscow Soloistsの公演が12日の夜、Suntory Halllで行われ、家内と一緒に素敵な演奏を一晩楽しみました。ダボスで何回かお会いしているUNIQLOの堂前さんもいらっしゃっていましたし、皇太子殿下もお見えになられていました。

曲目は:
1. JS Bach: Brandenburg Concert No 3 in G major BWV1048
2. WA Mozart: Sinfonia Concertante for Violin, Viola and Orchestra in E flat major K364
3. WA Mozart: Violin Concerto No 2 in D minor K211
4. Bruch: Kol Nidrei Op 47 for Viola ad Orchestra (version with strings)
5. WA Mozart: Serenade No 13 in G major ‘Eine Kleine Nachtmusik’ K525.

諏訪内さんは2曲目と3曲目。BashmetさんはViolaで2曲目と4曲目を演奏されました。

公演が終わって楽屋を訪ねましたが、諏訪内さんのお母様とは以前お会いたことがあって、その時に晶子さんにもちょっとだけお会いしていたことがわかりました。

blogの効用はありますね。思いがけない楽しい夜、そして嬉しいつながりができました。

2008年2月

財団法人大阪バイオサイエンス研究所 創立20周年記念シンポジウム
日程: 2008年2月7日(木) 17:10~18:00 ※公開講演会含む
演題: 「これからの時代、何が違うのか?」

日経環境シンポジウム「経済と環境の共生を実現するグリーンIT投資」
日程: 2008年2月22日(金) 13:00~14:00
演題: 「地球温暖化、環境技術、そして日本」

日本経済‐長くゆっくりとした下り坂

→English

2月3日(日)のワシントンポスト誌に「日本にとっては長くゆっくりとした下り坂:生産性と人口の低下が経済成長を逼迫している」とありましたが、これは最近の日本に関する特集記事や日本や諸外国で発行されているさまざまな書籍とも関連しています。日本が活力のある経済を取り戻すには改革を力強く推し進めなくてはならないことは明らかであり、残された時間はわずかです。政治の舵取りは今大変かもしれませんが、それでもしっかり行わなくてはなりませんし、ビジネスはコアコンピタンスにフォーカスし、まさに「act globally」する必要があります。日本のビジネス界では60年代のソニーの盛田さんのような存在がもっと必要ですね。

ダボスで「日本:忘れられた大国?」というセッションがあったのですが、モデレーターもパネリストも全員日本人だったことに違和感というか居心地の悪さを覚えました。過去の似たようなセッションには必ず外国人の専門家が含まれていたものです。私はセッションの最後の方に参加したのですが、部屋にはほんの数人の外国人しかいませんでしたし、使われている言語は明らかに日本語でした。(もしかしたら私が部屋に入る前に誰かが英語を使われていたのかもしれませんが・・・)しかも話されている内容がグローバル社会における日本の役割よりも女性の活用や移民政策など国内のことばかりでした。国内のことだったら日本で議論すればいいのではないでしょうか?

名目GDPで見ると日本はまだ世界第二位の経済大国とはいうもののグローバル社会からは身を引きたいつもりなのでしょうか?少なくとも私にはそう見えます。