学士会会報から

学士会会報 No.865号(平成19年7月発行号)から、2つの論文を紹介します。

・東京大学/伊東乾先生
 「ミューズの学とフロネーシス-旧制高校の精神と自由七科の今日的可能性-」
 (学士会会報 No.865号、pp29-35)

・横浜市立大学名誉教授/矢吹晋先生
 「朝河史学を読む-日本史の三大革命と天皇制」
 (学士会会報 No.865号、pp102-117)

野口英世アフリカ賞と小泉純一郎氏のご挨拶

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6/19のブログ(「パリから、日本の広報意識の低さについて一言」)で、実際の例として3つの事例を引用していますが、この3つとも、日本のAfricaへの大きな貢献についてでした。地理的な条件もあってか、日本のAfricaでの貢献は、アジアでの貢献に比べて、国内でも国外でもあまり知られていないと思います。上記のコラムで紹介しました、私の発信“Challenges for Japan’s Scientific Community in the 2008 G8 Summit”を、Business Daily Africaで“Analysis: G8 Summit will provide a major test for Japanese scientists”“Comment: Challenges for Japan’s Scientific Community in the 2008 G8 Summit”として掲載してもらいました。ケニアの新聞です。個人のレベルですが、少しでも日本の貢献を知って欲しいからです。On-Line時代の手段ですね。

来年のG8サミットは8年ぶりに日本がホストをするわけですが(7月に洞爺湖で開催)、来年は日本が主役を務め、国連などとAfrica援助の一環として15年前に始めた画期的国家事業、5年に一回開催されるTICAD(Tokyo International Conference on African Development)(こちらも参考に→www.ticad-csf.net/eng/index.htm)の第4回目となる会議が5月に横浜で開催されます。Africa50数ヵ国の国家元首等が東京に集まる、Africa諸国の間ではよく知られた会議です。でもどれだけ皆さんに、そして世界に知られているでしょうか?メディアでも最近は中国のAfrica進出ばかりが取り上げられていますが・・・。

ところで去年、小泉総理がAfricaを訪問されました。その時はEthiopiaとGhanaに行かれましたが、なぜEthiopiaとGhanaだったのかは、後ほど。Ghanaの首都Accraは野口英世が黄熱病で病死したところであり、野口英世記念研究所もあります。ここで小泉総理は日本政府による「野口英世Africa賞」の設立を発表されました。アフリカでの感染症などの疾病対策に貢献した医学研究や医療活動を表彰する国際賞で、この2分野で貢献をされた方を表彰しようというものです(政府のインターネットテレビでも紹介されています)。表彰は5年に一回、第1回は来年のTICADの時に発表される予定で、現在、選考が進行中です。Africa開発、HIV/AIDS、貧困などは皆さんご存知のとおり、世界の大問題です。

さて、小泉前総理は先日、この賞への募金の御願いということで、経団連の理事会にご挨拶に行かれました。そのときのご挨拶がとてもよかったと聞きました。御手洗会長を始め200人ほどの財界のリーダーの前での原稿なしの短いご挨拶だったそうですが、始まる前と後ではその場の雰囲気がガラッと変わったと聞きました。小泉前総理の事務所の許可を得て、挨拶の内容を掲載していますので、ダウンロードしてご覧ください。

 小泉純一郎衆議院議員の経団連常任理事会における挨拶(PDF)をダウンロード

皆さんはどう感じましたか?実にお上手ですね、お話が。メリハリと、ウィットが効いていてとてもいいお話と思います。この話を英語にして、Africaのメディアにも伝えようと考えているところです。

よく考えてみれば、これはまさに財界の方々が「小泉マジック」にかかったとも言えそうですね。ということは、まさに小泉総理が「天才、変人」だということです。実は、歴史的に見ても世の中を変え、科学や技術で世界を変えた人たちは、みんなその時代時代の常識を外れた「変人」なのです。このことは一度、官邸で行なわれた総合科学技術会議で小泉総理の前でも発言しました。みんな笑い出しましたけどね、私はまじめだったのですよ。

これは6/4のブログ(「St Petersburg、そして出口さんから、ドンキホーテへ」)、それから出口さんのメルマガでもお伝えしている、いつの世の中でも「ドンキホーテ」が大事だという主張と一致しているのです。

「特集 日本社会のイノベーション 今、イノベーションがなぜ必要か?」

慶應義塾大学出版会が編集・制作されていて明治31年3月に創刊され、平成10年には創刊100年を迎えた「三田評論」で「特集 日本社会のイノベーション 今、イノベーションがなぜ必要か?」というテーマで、慶応大学経済学部/池尾教授が司会、トヨタ自動車/渡辺社長、内閣府社会経済総合研究所/黒田所長と対談を行いました。

「特集 日本社会のイノベーション 今、イノベーションがなぜ必要か?」(PDF)をダウンロード

女性の社会進出はまだまだ遠い。なぜ?先端科学技術大賞の授賞式と『「最後の社会主義国家」日本の苦闘』

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4日、先端科学技術大賞の授賞式で20分の基調講演をする機会がありました。先日、沖縄でご一緒させていただいた高円宮妃殿下もご臨席です。講演の要旨は以下のとおり。翌日5日の「フジサンケイビジネスアイ」朝刊に掲載されていました。

●黒川清先生・ご講演:「イノベーション25」(注・黒川氏が座長としてまとめた2025年の社会に向けた政府長期戦略指針)の一部にフォーカスしてお話ししたい。その骨子からすると、今回の表彰には不満がある。学生部門の受賞者9人中女性は2人、企業部門では25人中1人だけ。外国人は21年間の歴史でたった1人。これは非常に異常だ。これからの世の中はこんな世の中ではないということを認識してほしい。ここにイノベーションのメッセージがある。
●「蒸気機関の開発」以来、産業・経済・社会のパラダイムには5つの変革の大きな波があった。今は1908年の自動車大量生産によって始まったパラダイム、「石油、自動車、規格品大量生産、消費文化」の極めて成熟したところにいる。そして、71年にインテルがマイクロプロセッサーを開発してから情報社会がインフラになり、インターネット、そしてネットスケープ、リナックス、グーグルなどが登場している。時代を変革するのは、受賞者の皆さんのようなパッション(情熱)とねばり強さを持ち、寝食を忘れて研究に熱中し、行動する人だ。
●インターネットなどを通じてこれから世界は一つになっていく。今までは研究から大量生産まで(一企業内などで)直線的につなげていたが、それでは破壊的イノベーションは出てこない。特にこれからのイノベーションで大事なのは、ヘテロジェネイティー(異質性)、ダイバーシティー(多様性)、アダプティブネス(変化即応性)だ。ダイバーシティーの観点から、冒頭の苦言を申し上げた。
●世界のどこから競争相手が現れてもおかしくない。強い部分は競争で伸ばすが、弱いところは強い人たちと組む戦略が必要。ぜひ世界中に友達を作り、エネルギー、環境、資源、南北問題など世界の出来事を身をもって経験し、起業家精神を共有して解決に取り組んでほしい。そのうえで、日本がどんな国になりたいか、自分の企業がどんな企業になりたいか考えていただきたい。

事実、2006年度の受賞者も学生部門では5人中女性はゼロ。企業研究所部門では20人中女性は1人です。2006年に学生部門で受賞した1人がこの賞では始めての外国人だったということをみても、日本がどんなに鎖国マインドなのか理解できるでしょう。皆さんはどう考えますか。

この点で最近、面白い本がありました。『「最後の社会主義国」、日本の苦闘』(毎日新聞社 2007年3月)というタイトルで、子供の時から15年間を日本で過ごした経験を持つレナード・ショッパさんというアメリカ人による著書です。日本のこともよく知っているし、いくつか著書もあります。使われているデータも正確で、観察も、解釈も鋭いと思います。

日本女性の社会進出は、UNDPでも知られるように、女性の開発指数(Gender Development Index: 選挙権、教育機会や大学進学率等)でみると世界で8番目と素晴らしいのですが、女性の活用指数(Gender Empowerment Index)では世界で43番目となってしまいます。このギャップは女性が活躍する機会を失っていることを示し、非常にもったいないことです。女性の活力、能力をいかに活用できるか、これはこれからの日本の活力への大きな課題なのです。過去にも何度か触れているので、「男女共同参画」等のキーワードで検索してみてください。

以前のような“Feminism”の動きは、老人介護体制の導入等で女性が昔に比べて開放され、さらに自立しながら生活ができる「パラサイトシングル」の出現など、女性はいつまでも一人でいられ、亭主に苦労する必要のない選択肢が増えた。わざわざ結婚もしないし、海外へも出られるし、子供の養育や教育等への負担を考えればこれも避けてしまう(一昔前は日本女性と結婚することはひとつの理想といわれていましたが、今はどうでしょうか?これは男性社会のステレオタイプ的価値観ですが・・・)。その結果、出生率の低下は必死で、男女共同参画などはお題目になり、改革への政治的な力にはならなくなってしまった。だから改革が進まないという趣旨です。言いえて妙ですね。この本の英語のタイトルは「Race for The Exits」です。

さらに、優れたグローバル企業は、多くの規制やエネルギーコストの高い日本から海外へ出るという選択肢を行使できる。選択肢のない人たちや企業だけが日本に残るという、やや情けない社会ともいえます。これがグローバル時代の怖いところです。

ところで、女性のリーダーシップでは今年のForeign Affairs, May/June issueに面白い論文があります。2007/3/32006/1/28のブログで紹介したように、米国Ivy Leagueの8校の中で、Harvard、Princeton、Penn、Brownの4校ではトップが女性です。一方日本では、例えば国立大学の87校中、女性のトップはお茶の水女子大学だけです。さらにこの論文は、政治の世界では女性のリーダーはまだまだ少ないが、世界の多くのNPOのトップは半数以上が女性であること、そして、その意味合いと政治における意義についても述べていて、なかなか面白いものです。ご参考までに紹介します。