「私の苦笑い」という囲み記事が時々日経新聞の朝刊に掲載されますが、1月29日に私の話が掲載されました。以下のような記事です。

●「ロスで焼鳥屋開く」の軽口が災い -突如来訪、「雇って」に焦る-
●1979年、渡米して丸10年たっていた。当初、2~3年で日本に帰るつもりだったが、若くても実力さえあれば活躍できるオープンな雰囲気が気に入り、米国で勝負しようと決めた。カリフォルニア州の医師免許を取得、専門医の資格も取り、この年カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の内科教授になった。一人前の大学人・医師としてようやく認められたのかなあと実感できた時期のことだ。
●初夏、ストラスプールで開催される国際学会に招かれ、家内と一緒にフランスに行った。その4年前にも腎臓病の名門テノン病院で研究するため2ヶ月間パリで過ごしたが、当時は気づかなかったがオペラ座近くに焼鳥屋ができており、2、3度足を運んだ。
●ロサンゼルスにも多くの日本企業が進出し、すし屋やうなぎ屋などが駐在員相手に繁盛していた。パリの焼鳥屋は日本人客よりも地元の人で大にぎわい。味もすばらしくいけた。店で働く一回りは年下の若者といろいろ話した。日本での料理人としての経験はゼロ。なんとかなるさと軽いノリでパリにやってきてから仕事を見つけ修行した、という。「鳥はいったんしめると全部食べられる。捨てるところがなくていいですよ」。なるほどなあと思った。
●私は「ロスにまだ焼鳥屋はない。店を持つのはどうかなと考えている」と口にした。もちろん本心ではない。ただ、米国では教授といても給与や研究費は自分で稼がなければならない。雇用は日本のように安定しておらず、いつクビになるかわからない。不安を打ち消すため「いざとなれば焼鳥屋をやろう」と考えていたのも事実だ。
●1年後、自宅の電話が鳴った。「先生、店の話どうなりましたか」。パリで出会った若者の声だ。「今、ニューヨークにいます。できれば雇ってもらえませんか」。懐かしさは一瞬で吹き飛んだ。よく聞くと、何のあてもなくパリの店をやめて米国にやってきたという。
●家内からは「調子のいいことを言うからよ」とたしなめられたが、放っておくわけにもいかない。ロスに呼び寄せ、約1ヶ月居候させ、行きつけの日本食レストランへの職を紹介した。
●その後、しばらく何の音沙汰もなかったが1年ほどたってまた電話があった。「いろいろとお世話になりました。ニュージャージーに自分の店を持つことができました。リンカーンコンチネンタルに乗ってます」。たくましさにただただ感心した。
●失敗を恐れる人生はつまらない。才能豊かな若者たちに出会うたび、日本のような「ムラ社会」から海外に飛び出してみろとけしかけている。決してムダにならないと思う。
●しかし、時に深く考えもしないで発言することもある。人の人生を左右するだけに「言い過ぎたかな」と反省する。
●あるとき、私の前に日本学術会議会長を務めた吉川弘之氏に「黒川さんはいつもずけずけ言っているように見えるけど、すごく人に気を使っているね」といわれた。うれしかった。(談)

・・・という話です。

さらに、この記事の囲みの中に、
●<失敗訓>次代の担い手 育成に注力
●安倍政権で科学技術担当の内閣特別顧問になった黒川さんは、この10年、日本の医学教育の建て直しに取り組んできた。次代を担う人材をきちんと育てることが自分の責務と言い切る。
●苦い経験がある。オウム真理教信徒で都庁郵便物爆発事件などの実行犯が東大時代の教え子だった。「とてもまじめで優秀な学生だった。研修医を辞めると相談に来たとき(入信に)気づいていれば・・・。慚愧(ざんき)に堪えない」と悔しがる。(科学技術部 矢野 寿彦)

・・・とまとめてあります。

矢野さんありがとう。妙な話で申し訳なかったですけど、うまくまとめてくれました。

そして、この記事を読まれた女性からホームページ宛にメールをいただきました。少し紹介します。

「1/29 日経を読んで・・・黒川清先生へ」

黒川清 先生

突然のメール失礼いたします。
私はいつも恥ずかしながら夫の持ち帰ってくる日経新聞を
毎日1日遅れでなんとなしに読んでいる者です。
「私の苦笑い」というコーナーの黒川様の記事を今朝出勤前に読んで
思わずじわーっと感動がこみ上げてきて涙ぐんでしまいました。
こんなに暖かい気持ちになれて、嬉しくて、絶対お礼が言いたくて
先生のホームページを検索してみました。
ロスが大好きなのでその文字につられて読んだのですが・・・
先生の暖かいお人柄、若者に対する愛情があふれ出ていて、
私まで勇気付けられました。
薬剤師として薬局を始めて10年経ちますが、患者さんを含め
いろいろな人との出会いで自分も成長してきました。
そして、もっともっと色々な体験を通して成長したいです。
黒川先生のことは紙面で初めて知ったのですが(もしかしたら本を持っているかも?
すみません)この記事大切にとっておきます!
ありがとうございます。
感謝の気持ちをこめて・・・

私の気持ちにこのように反応してもらって、本当に嬉しかったです。

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