「大学病院革命」が出版されました。

この本は、わが国の医療制度の問題をなるべく多くの方に身近に感じていただけるように、皆さんの「どうして?なぜ?」という疑問からスタートして、日本とアメリカの医療を経験した上での両国の比較、そして私が考える問題解決方法までわかりやすく記載した書籍です。

皆さんもご存知のように、現在わが国の医療制度は多くの問題を抱えています。それは医療制度のみならず、この国全体に特有の、社会的背景に深く根ざした問題であり、医療制度はその一端に過ぎません。

今、これらの問題点をきちんと把握し、国民一人ひとりが問題意識を持って行動を起こしていくことこそ、将来、「良い医療、良い社会」を作る源となると思います。

今後より良い医療を受けるため、そして私たちの次の世代にそれらを残すために、今、何をすればよいのかを一緒に考えてみませんか。医療に対する問題点を「何も変わらない」と諦めてしまわずに、皆さん一人ひとりの問題として捉えていただくきっかけになればとてもうれしく思います。

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黒川 清 著
四六判 228ページ
定価: 1,365円 (税込み)
ISBN: 4-8222-4556-6
日経BP社
2007年1月29日発行

ダボスから(3)

26日のダボスは一番忙しかったです。午前中は私が司会で“Who Funds Research and Innovation?”というテーマのパネルディスカッションを行いました。8人のパネリストは以下のメンバーです。

・Carol Bartz, Executive Chairman, Autodesk, USA
・Seth Berkeley, President and CEO, International AIDS Vaccine Initiative, USA
・Alexander Bradshaw, Scientific Director, Max-Planck-Institute for Plamsa Physics, Germany
・James Fruchterman, President and CEO, The Benetech Initiatitve, USA: Social Entrepreneur
・Thomas Insel, Director, National Institute of Mental Health, USA
・Linda Lomier, Vice-President, Yale University, USA
・Neelie Kroes, Commissioner, Competition, European Commission. Brussels
・Xu Zhihong, President, Peking University, People’s Republic of China

豪華なメンバーです。いろいろ盛り上がりました。意見の違いは多くても、このようなフラットな議論のプロセスで相互理解と共通のゴールを共有することはとても大事なことだと感じます。楽しいパネルでした。午前の同じ時間帯に、石倉洋子さんがHarvard Business Reviewの編集長Thomas Stewart氏と共同司会で進行する「How Cities Drive Innovation」というパネルもありました。もちろん私は出ることはできませんでした。

さらに午後にはJames近藤君の司会で“How Much Should the Industrialized World Spend on Healthcare?”というこれも大変興味あるパネルがありました。最近とみに医療政策に進出してきたMichael Porter氏もパネリストの一人として参加していました。彼とは去年、同じテーマで私と一緒のパネルにも参加していました。

こちらにも私は出れませんでした。というのも、非公開で内々に行われた、「化学産業界社長の会」のパネルでしゃべるよう招待されていたからです。東レの榊原社長、住友化学の米倉社長(写真1)もおいでになりました。1/25のブログで紹介したDaniel Esty氏(Yale U.)とも一緒でした(写真2)。

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写真 1: 住友化学の米倉社長(左から二人目)

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写真 2: パネルに招待された(右から)Estyさん、私、そして中国の大物Siweiさん。「Green to Gold」の本が見えますね。

彼とはすっかり意気投合し、彼の最近の著書「Green to Gold」(写真2に見えています)をいただきました。これからの企業のあり方について極めて参考になると思います。企業と環境対応のあり方について明快に書いてありますので、是非多くの日本の企業人に読んでもらいたい一冊です。これからの世界のビジネスのトレンドを予測させます。事実、今回のダボス会議で一番多くの人が集まったのは、10を超える環境と気候変動のセッションでした。エネルギーではSteven Chu氏が存在感を出していました。

そのあと16時15分から、“Scaling Innovation in Foreign Aid”というセッションを聴きに行きました。Bill Gates氏、Paul Wolfowitz氏(第一期Bush政権のネオコンの一人。現在、Word Bank総裁)、NY University経済学教授のWilliam Easterly氏、そしてLiberia大統領のEllen Johnson Sirleaf氏(写真3)が参加していました。司会はNewsweek InternationalのEditorであるFareed Zakaria氏でした(権威を恐れぬ実に鋭い突っ込み!メディア人の“鑑(かがみ)”だと感じました)。去年、Gates FoundationのGlobal Health InitiativeのDirectorとなった、UCLA時代からの友人、Tachi Yamada氏ともここで一緒になり、Malinda Gatesさんを紹介されました。このパネルの議論を聞いていて、Bill Gates氏は恐ろしいほどシャープだと感じました。

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写真 3: 左からBill Gates氏、Prof. Easterly、そしてWolfowitz世界銀行総裁。

この後はTony Blair氏、U2のBono氏、Gates氏などが出るパネル「Delivering on the Promise of Africa」でした。こういうところでは必ず緒方貞子さんがパネリストに入っています。緒方さんからはいつも日本の誇りというものをひしひしと感じます。

夜は夜で、これからの宇宙プロジェクトのパネルに呼ばれていて、私の盟友、The Royal SocietyのPresidentでCambridge University-Trinity CollegeのMasterでもあるLord Martin Rees氏と一緒で、楽しかったです。このセッションには石倉洋子さんも来られて、Rees氏の隣に座っていました。帰りは石倉さん、坪内さん(写真4)と一緒に帰りました。

明日の朝はダボスを離れて帰国の途に着きます。今回は緒方貞子さんや竹中平蔵さんが数多くのセッションに参加され、飛び抜けた存在感があったと感じました。嬉しいのですが、世界第2位の経済大国としては、他にももうちょっと存在感を出せる人が欲しいですね。皆さんご苦労様でした。

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写真 4: 左から石倉さん、私、そして坪内さん。

ダボスから(2)

今日は一日フル稼働になりました。午前は旧知のWanandi氏がパネリストをされる“Islam/South East Asia”のセッションに参加。Malaysia、The Philippinesから論客が参加されていました。同じ時間に日本の経済動向についてのセッション“Japan: Beyond the Recovery”があったのですが、出れませんでした。昨日、1/25のブログで紹介したJames近藤君が司会で、竹中平蔵さん、伊藤隆敏さん、経済同友会の北城恪太郎さんが日本側として参加。後で聞いたところでは、竹中さんが最後にしっかりと締めたということでした。

午後には小池百合子さんがお出ましの“Northeast Asia”のセッションがあるので顔を出しました(写真 1)。その後は、明日私が司会をするパネルの打ち合わせを担当事務方と行い、去年11月にインドでお会いしたインド産業大臣のNath氏、一橋大学の研究科長でダボスは久しぶりという竹内弘高さんと奥様、そして3年ぶりにぐらいになる船橋洋一さん(もう2報以上、ダボスの事を書かれていますね、すごい)などなど、多くの方とお会いしました。

夜は“Japan Night”のレセプションがありました。今年の主催は日本の“水フォーラム”でしたが、ちょっと変ですね。森喜郎前総理が会長のNPOで世界の水問題について頑張っています。先週、WHO訪問の際にGenevaでお世話になった藤崎大使もお見えになり、東大の小宮山さんや慶応の安西さんと奥様、アジア開発銀行の黒田頭取、JETROの渡辺会長もお見えでした。また、Googleの創業者のLarry Page氏とSergey Brin氏も来てくれました。Page氏との写真がありますが、Brin氏もすぐそばにいました。Googleの歴史を見てみると、いろいろと面白いことが分かります。小池さんはこの後、夜8時から行われた“Military/Asia”というパネルに出席されたようです。

また、8時からは「横田めぐみさんの物語」(約45分の映画)が放映され、皆さんじっと終わりまで見ておられました。“感動的でした”という方が多かったです。日本から来ていた皆さん、ご苦労様でした。

10時から、“McKinsey Global”のレセプションに出かけ、Michael Porter氏にも会いました。長い一日でした。

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写真 1 小池百合子総理補佐官と会場で

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写真 2 竹中平蔵先生と

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写真 3 藤崎大使、石倉洋子さんと

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写真 4 (右から)竹内弘高さん、私、小宮山東大総長、安西夫人、村沢さん(東大総長の右腕)、安西慶応塾長

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写真 5 Google創業者の一人 Larry Page氏

ダボスから(1)

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23日、昼にLondonを出発し、Zurich空港へ。夕方にDavosに到着しました。今年で7年連続となるDavos会議(これは通称で、正式にはWorld Economic Forum)に参加するためです。2003年、2004年、それから2006年の会議についてもブログに書いています。途中の道も山も、例年よりはるかに雪が少ないですね。今年になって訪問したWashington DC、Geneva、Londonはみな温暖な気候です。

Davosに入ってまずは会議登録とホテルへのチェックイン。面白そうなプログラムが数多くあるので、どれを選んだらいいか、苦労するところです。夜は議長のSchwab氏主催のReceptionがありましたが、そちらはスキップ、明日の予定を考えて一休みです。

24日、まず会場をうろうろと。Lester Brown氏等、知っている人たちと出会っては、握手、「Hey, what’s up?」から始まるルーチン。いろいろと出会いがありました。10時からは「CNBC Debate?Make Green Pay」という刺激的なタイトル(このタイトルのつけ方がうまい)のTV放送録画取りのあるパネルに参加しました。地球温暖化は急速に悪化するなかで、エネルギー政策等は「市場に任せるか、政府の規制か?」を「Pro vs Con」で1つの質問に対して一人ずつ5分で意見を戦わせ、相互に1分間の質疑、それから会場から質問を受けるという構成。

Q1. Nuclear energy and clean coal are the only viable alternatives to oil: Yes or No
Q2. Markets are superior to regulation in leading corporations towards “greener” operations: Yes or No
Q3. A global carbon tax will do more harm than good?

質問の内容も面白いですが、Daniel Esty氏(Yale U.)や“Stern Report”のNicolas Stern氏などなかなかよかったです。Londonで会う予定だったStern氏を捕まえそこないましたので、メールをしておきました。しかし、今年の世界ビジネス界は気候変動、地球温暖化が熱いテーマになりそうな予感のパネルでした。26~28日に、欧州、北米、アジア等で放映されたようですが、誰かごらんになりましたか?

昼のビュッフェでもいろんな方と会いました。竹中平蔵さんは、今年は4、5日の予定で参加されるとか。心強いです。またこの日は、「世界級キャリアの作り方」を一緒に書いた戦友、一橋大学の石倉洋子さんと、私と共に医療政策機構(英語版)をリードするジェームス近藤君がパネルの座長をしていました。残念ながら私は時間がぶつかってしまい、どちらも参加できませんでしたが。

次回はいくつか写真を掲載する予定です。ここでは一足早く、Khatami元イラン大統領のセッションの写真を紹介します。右端がKhatami氏。左にイランのLolwah Al Faisal王女、一番左が“The World is Flat: A Brief History of The 21st Century(2005)”、“The Lexus and the Olive Tree: Understanding Globalization(1999)”等で有名なPulitzer賞を3回受賞しているNY TimesのThomas Friedman氏(司会)です。

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ロンドンから、科学者の信頼

GenevaからLondonに入りました。目的はTony Blair首相の科学顧問(Chief Science Advisor)で、私のcounterpartというべき立場にある旧知のSir David King氏に会うこと、それから“Stern Review Report”のSir Nicolas Stern氏のスタッフと会うことです(本人はインドに出張中でした)。2008年に日本が主催するG8 Summitの件もあるので、野上大使もご一緒してくれました(写真1)。とても有意義な時間でした。

イギリスの科学顧問(Chief Science Advisor)というものは組織化されていますが、最近、英国議会でさらに科学顧問の機能強化の提案も出ているそうです。Blair首相の退任後、この組織を統括するDTI(Department of Trade and Industry)をDepartment of Energyとし、さらにDepartment of Scienceを作るということも検討されているようです。(※1)

King氏との話で一番印象に残ったことは、英国社会の持つ科学への信頼の高さと、それを保障する科学者コミュニティが、個人、それから総体としての個別分野、俯瞰性、哲学性、歴史性、国際性のレベルでも、科学的、社会的責任への意識や発言の質が高いということです。これはひとつは伝統であり、そのような社会的信頼が築かれてきた歴史と文化ともいえます。とにかく科学的根拠に基づいた政策、提言を、という精神が、政治でも、社会でもいつも強調されているということです。国家としても科学に基本をおいた政策の使い方が客観性が高いだけに国際的に信用度が高く、そのために戦略性が極めて高い。英国はその実力の2倍、3倍の存在感を世界に与えていると認識されています。今回の“Stern Review Report”もそのような言葉を裏付ける報告です。だから、世界からの信頼も大きいのですね。Blair首相も「科学的事実に基づいた意見」ということを繰り返し強調し、それを戦略的に国際的な場でも使うのです。また首相は科学者の意見にはよく耳を傾けるそうです。科学者の高い見識と、一人ひとりの評価が仲間の中での開かれた相互評価を通して日常的に広く認識されています。これは本当に立派なことです。社会からの信頼の確立と維持が一番大事という哲学、認識です。

Stern氏のスタッフ達との会合もよかったです。外務省 Special Representative for Climate ChangeのJohn Ashton氏(写真2)等と、その後はDepartment for Environmnt, Food, and Rural AffairsでDavid Warrilow氏、Stephen Cornelius氏、Ian Pickard氏と気候変動、エネルギー関系担当との会合でした(写真3)。

Stern氏本人には、5月にLondonでお会いする予定です。

夜は野上大使公邸で、高岡公使、松浦一等書記官も参加し、さらに論議が弾みました(写真4)。

ところで英国の外交官については細谷雄一氏の「大英帝国の外交官」(2005年)がいいですよ。ここに描かれている外務省(Foreign and Commonwealth Office)が、どのような歴史的意味と位置付けを持つのか、これらを理解しながらこの本を読んでください。この外務省の建物の中でも写真をとったのですが、撮影が禁止されているとのことでここに掲載することができません。細谷氏はまだ若い(30代前半と思います)のに何冊も本を書いている学究の徒です。

(※1)グローバル時代に向けて英国の強いところをさらに強く、国家としてのメリハリを作るという明確な政治的意思です。こんなこと日本で考えられますか?政治と役所の役割はしっかり確立しています。グローバル対応へのスタンスは、対立する保守党も、Shadow Cabinetの財務大臣Osborne氏から去年の夏に東京で聞いた話でも同じ意見でした。ある英国人の意見ですが、英国が歴史上、世界に誇れるものは“科学、金融、民主主義”というのも理解できます。

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写真1: Sir David King氏のオフィスで野上大使と

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写真2: John Ashton氏と英国外務省で

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写真3: Warrilow氏、Pickerd氏、Cornelius氏とDEFRAで

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写真4: 大使公邸で野上大使と

ジュネーヴ、WHO本部から

2005年に始まったWHOのCommission for Social Determinants of Health(CSDH)で、私がCommissionerをしていることはご存知の方も多いかと思います。これまで、Santiago de Chile、Cairo、Nairobiなどを訪問しています(2006年6月と7月のブログで少し触れています)。今回はGenevaの本部での開催です。1月16日、21時55分発AFの予定でしたが、内閣府の仕事などがあって、17日朝の出発とし、CSDH会議の第1日目は欠席となりました。

CSDHから出されている出版物、Report等はこちらから見ることができます。

Commissioner全員の写真がWHOのサイトに掲載されています。事務局長のMagarert Chan氏(写真中央の女性)を囲んだ記念写真です。私がどこにいるかわかりますか?また、“Commissioners meeting in Geneva, 17-19 January”の報告にはChan局長、Amartya Sen氏、Sir Michael Maremot氏、そして私の4人が写った写真が掲載されています。

今回はCommissionerの一人のAmartya Sen氏も初めて参加しました。2年前に東京でお会いした時に、「たまには、CSDHに出てくださいね」とお声がけしといたのですけどね。皆さんは、彼のことをご存知ですよね?現代の最高の哲学者、知能の一人です。1998年Nobel経済学賞の受賞者、Cambridge大学 Trinity CollegeのMasterを務め、3年前からHarvardに戻られています。読書漫遊 「インドの深みを知り 日本を見つめ直す」(PDF)でも紹介していますので読んでください。日本学術会議の鈴村興太郎副会長(一橋大学教授。私の尊敬する一人です)のCambridge大学時代の先生です。

Sen教授は会議中の意見も実に的確で、夜のレセプションでは話が弾んで実に楽しかったです。鈴村氏のほかにも、わたしの好きな宇沢弘文先生、青木昌彦氏、Lord Martin Rees氏、Asia Pacific UniversityのMonti Cassim氏等、共通の知人も多いし、本当にすばらしい方です。

私の主張のポイントは、「社会的格差(social inequity)はすべてこれまでの社会が歴史的に男性優位だったことにある。どの社会でもごくわずかの例外を除けば男性と女性が半々なのだから、貧富の差別なしでどの国でも、地域社会でも、まず「男女の社会的平等を目標とすべき」というものです。例外なく、達成目標としては優れた指標だと思います。何人かの女性のCommissionersから、「その通りなのだけど、私達からは言い難いのよね、ありがとう」といわれました。

WHOでは、上の写真のように新しい事務局長のDr. Margaret Chanともお会いしました。(私の尊敬する尾身茂さん、本当に残念でした。国家戦略の問題でしたね。)

また、日本人で大活躍しているシブヤDr.、モチヅキ氏、東海大学におられたタムラDr.、厚生労働省から来ているDr. エナミには大変お世話になりました。夜にはこれまた厚生労働省のDr. シノザキ元局長、タナカ、コイケ、タケイ(漢字が違うといけないので皆さんカタカナにしてあります)、そしてWorld Economic ForumのGenevaの本部で活躍しているツチヤ君も一緒に夕食を楽しみました。

明日からLondonですが、ヨーロッパの北部は大変な嵐で、飛行機が飛ぶのかどうかちょっと心配です。

沖縄、Reuters、そしてカナダとの交流

前回はWashington D.C.からでしたが、10日に帰国して、翌日11日の午前は仕事、午後から沖縄にやってきました。仲井真知事らと夕食させていただき、翌12日午前は沖縄の新しい科学技術大学院大学に行きました。予定地の恩納村の一部に古くから残る、「白雲荘」といわれる建物があり、その建物が改築されて素敵なものになっています。ここにshowcaseなるような建造物ができるのだと思います。今年のうちに研究所の建築が始まる予定です。環境アセスメントとか、造成が難しいところなのです。

移行期の研究所も訪問し、昼食は何人かの研究者と楽しくさせてもらいました。前回報告した、「Janelia Farm」は確かにここのモデルとして大いに参考になるものと感じます。設計はすばらしいものになるでしょう。楽しみです。

午後は、沖縄県行政の幹部職員にむけた講演です。沖縄の強みを生かすべきで、それは地理的、歴史的な課題はありますが、特区を大いに活用して増やすこと、国際的な人脈(米国への移民が主ですが、沖縄は広島と共に移民した人の数が多分一番多い県です)をICT等を 使って生かすこと、さらに沖縄の科学技術大学院が将来の世界の人材育成の中心の一つになるであろうこと等々をお話しました。ゴルフでも世界的な人材を輩出しているのです。どこでも同じことですが、グローバルの時代では特に、中長期的な視野で将来を担うような国際的人材の育成、世界に通用する人材を輩出することが重要です。また、沖縄は臨床研修では一番人気を誇るエリアです。ここでも何度も紹介していますが、若者には絶大な人気があり、多くのすばらしい医師を輩出しています。

さらに沖縄の強みはその観光資源でしょう。南国の香り、ビーチリゾート、慶良間諸島などのすばらしいスキューバスポットの魅了等々です。沖縄の観光収入は年4,000億円。国内からの観光客が年間約500万人ですが、海外からのお客様は年間たったの15万人だそうです。那覇空港への直通の国際線はマニラ、台北、ソウル、北京です。毎日一便あるようですが、沖縄の魅力と対照的な中国の北や内陸の瀋陽、大連、北京、南京、西安などで宣伝し、さらに週2、3便でもいいから直行便を出してもらうことを提案しました。はじめは週2便のチャーター便でもいいのです。2泊3日、3泊4日とかの暖かい南国沖縄ツアーは、特に秋や冬の寒そうな時期には、すばらしい魅力と思います。沖縄の魅力がどんなお客さんを引きつけるのかを考えて、と私の考えをお伝えしました。みなさんはどう思われますか。

13日は土曜日でしたが、去年ダボス会議で知り合った、ReutersのLondon在住の女性記者“わき”さんとのインタビューがありました。どんな人が国際感覚を無意識の内に内在していくのかなど、話が弾みました。

その後はToronto大学のLollar教授とお会いしました。地質化学が専門ですが、話はまたもや弾みました。彼女は3年前に日本学術会議とカナダのアカデミーがはじめた、「Japan-Canada若手女性科学者交換プログラム」の一環でこられたのです。このプログラムのポイントは訪問先の高校生たち(日本から行くときは小学生のこともありえます。生徒の言葉、つまり英語の問題なので。)とセミナーをすることなのです。一週間の滞在ですが、皆さんとても楽しまれているようです。今回も高校生からたくさんの質問があがって、大変よかったとの話でした。去年Canadaへ訪問したお茶の水女子大学の加藤先生もこられました。このプログラムについては、去年の加藤・本間両先生が実に生き生きと、Canadaの科学教育で大学が中心となった取り組みなどをレポートされています(「日本・カナダ女性研究者交流事業を終えて」)。日本の子供たちに行われている科学教育が、なにか変なことにも気がつくのではないでしょうか。

グローバルの時代、若い時から、広い世界を訪ねて、見て、肌で感じてほしい、そんな機会をもっと増やしたいと思います。日本でもどこでも、将来は若者たちのものですからね。2006/7/212006/11/27のブログも参考にしてください。これが私が一番大事に感じ、考え、実践に移していることです。

16日には「イノベーション25」委員会が開催されました。17日からはWHOの会議でGenevaへ出発です。

早々にWashington DCから

明けましておめでとうございます。時間のたつのは早いものですね。6日からWashington DCに来ています。なんと、日中の気温は25度。まさに「異常気象」です。この暑さなので、半袖でテラスでコーヒーを飲む姿が町中で見られます。この時期で25度まで気温が上がるのは過去100年で初めてのことだそうです。

こちらに着いて早速、米国医学アカデミー(Institute of Medicine)会長のHarvey Fineberg氏と昼食。多くの課題についてとてもいい議論ができました。その夜、まったく偶然なのですが、Gates Foundationの関係者からメールがあって、昼にFineberg氏と話していたまさにその内の一つ、私も関わった「Disease Control Priority Project, 2nd edition」の件で問い合わせがありました。不思議なものです。

NIH所長のZerhouni氏との面談も予定の時間を大幅に超過してしまうほど議論が弾みました。そして、待望のJanelia Farmに。まったく新しいコンセプトの研究所で、所長のGerald Rubin氏も大変素晴らしい方でした。まだ30%程度しか完成していませんが、素晴らしい構造の施設となっていました。私の関係している沖縄の新しい大学院大学にも大いに参考になります。その他には米国製造業協会にも訪問しました。

国務省の科学顧問George Atkinson氏とも1時間ほどお会いしましたし、National Academy会長のRalph Cicereno氏、国際関係担当局長のJohn Boright氏等々、実に内容の濃い、刺激的な時間を共有できました。その夜には、今度はMillennium Villege Projectの件でJeffrey Sachs氏が3月に日本に来るという件でメールがあり、すぐにNew Yorkに電話で連絡を取ることができました。

それにしても、今回お会いした方たち、皆さんがアメリカのそれぞれ重要な機関の長であったり、重要なポストの方たちばかりでした。それぞれの視点、向いている方向が国際的で、日本の同じような立場にいる方たちと会うときとは、知的な刺激レベルがちょっと違うように感じました。皆さんもこのような経験があるのではないでしょうか?

今回は大使館の若い方たちに色々とお世話になり、充実した訪問となりました。大使館の皆さんには大いに活躍して欲しいという思いでいっぱいです。それぞれ一人ひとりが本当に素晴らしい方たちばかりでした。個人個人の力を十分に発揮できるようにしたいですね。そうでないと、組織だけでは総合力というものは決して発揮できないからです。

10日に帰国しました。新年早々、いやはや忙しい、しかし充実した旅でした。

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 写真1 NIHでZerhouni所長と。

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 写真2 Janelia FarmのRobin所長と。

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 写真3 Janelia Farmの玄関脇で有本建男 社会科学研究センター長と