「算数で、何を学ぶのか?」~日中子供数学オリンピックへのメッセージ

日中両国の小学生を中心とした開催された「数学、日中知的交流会」(2006年8月6日)のプログラムに、私のメッセージが掲載されました。

日中の子供数学オリンピックへのメッセージ: 「算数で、何を学ぶのか?」

算数は何をすることでしょうか?これはみんなが赤ちゃんのときから生まれつきもっている「数、空間、時間」の能力をどのように理解し、日常生活に使うかを知り、学び、お互いの考えや意見を交換できるようにすることなのです。物事を考える基本です。ほかの多くの動物にも生まれつきこの様な能力があるのです。草原のライオンを考えて見ましょう。獲物をとるとき、たくさんいる獲物の群れからどれか一匹に目標を絞り、そこへの距離を測り、そこへ達する時間を考えながら獲物を追っかけ捕まえるのです。まさに「数、空間、時間」を調べ、考えているのです。

でも、一人ひとりの人間に、動物以上の能力を与えてくれるのが教育であり、その基本に算数があるのです。ですから算数を学ぶことは、人生の大事なときにも、どのように考え、計画し、行動すればいいのかを教えてくれる勉強の基本なのです。こんなことはあまり先生も意識はしていないかもしれませんが、そこに算数の大事な役割があるのです。算数ではただ数を計算したり、お金を勘定したり、距離や時間を測ることを勉強しているのではありません。もっともっと大事なことを学んでいるのです。

算数は、文化や言葉や国を越えた人間に共通の価値があります。だから算数のオリンピックも可能なのです。どんどん世界が広がるこれからの時代に、歴史や文化に関わらず、人間共通のみんなの言葉としての算数があるのです。

この企画は、この様な考えを持って、地球での生活を楽しみ、地球の将来を担っていく若い皆さんが、手をつなぎあって、すばらしい世界を築いてくれることを期待してできているのです。「算数のオリンピック」は、このような大きな目標へ一緒に向かっていこう、というプログラムのひとつなのです。

今回は、勉強も、実験も楽しんでください。一緒に時間をともにして、友達の輪を広げることが一番大事なのです。それには算数は世界共通の言葉としてとても向いているのです。今回は、中国と日本の子どもたちだけですが、もっともっと友達の輪を広げてください。

日本学術会議会長  黒川 清