「大学発」ベンチャー

7月に新聞紙上で、大阪大学発のバイオベンチャーで、大学で初めてバイオ関連で上場したという「AnGes」についていくつかの報道がされていました。公開前の株の売買で学部長が儲けたとか、株を所有している研究者と患者さんの間に利益相反がある事などについて報道されたのです。これは結構難しい問題ですが、現在の世界の状況と、最終的な成果が国際的市場を目指しているので、どうしても海外のルールの傾向と変化を知っている必要があるでしょう。国内的視点からだけの問題提起では解決できませんし、問題の認識、提起ごとに、知恵を絞って、しっかりした透明性の高いプロセスと透明性の高い「ルール」を構築していく必要があります。これは各研究者や、各大学に任せるようなことではありません。国の政策の問題です。こんな事を研究者の責任ととらえているようでは、研究者は研究に集中できません。これは上場した会社の経営者の責任でもあります。

このようにリスクの高い「大学発」ベンチャーを奨励しておきながら、所詮素人の大学の研究者の責任追及をするばかりでは、研究者はやる気をなくし、社会や患者さんから疑いの目で見られ、しかも社会の理解も支援もなく、明確なルールもないとなれば、戸惑ってしまうばかりです。いくら政府が研究費を投資し、大学発ベンチャーを奨励して、数の増えた事ばかり宣伝しても、本来、多くは失敗する可能性の高い(だから「ベンチャー」というのです)「大学発ベンチャー」は、結局は失速してしまうでしょう。

これらについては、朝日新聞の7月30日の朝刊に「私の視点: 治験と株保有、強制力ある規制が必要」としてコメントをしました。

皆さん、どう思いますか。