ロンドンにて(2)

今はロンドンに来ています。

ロンドンは今が1年で一番良い気候の時です。アスコット、ウィンブルドン、そしてジ・オープンと続くのです。秋から冬はとても暗いですから、このような太陽がさんさんと降り注ぐ時が来ると、皆うきうきするのは、日本ではなかなか理解できない感情かもしれません。しかしこのような自然環境の人間に与える影響が、多くの文化や芸術の背景にあるのでしょう。いまのような「国際化」の時代には想像もつかないかも知れませんが、それぞれの文化の違いの理由を理解できるような気がします。歴史や哲学の由来を理解しようとする心持も大切でしょう。お互いの違いへの理解を深めますからね。歴史や哲学の本をいくつも読んでください。

ロンドンに来る前は、国際学術会議の仕事でパリに滞在しました。American Hospital of Paris(AHP)を訪ねて、岡田正人先生とも会ってきました。大阪市立大学医学部の6年生の学生さんも勉強に来ていました。岡田先生はパリに来て6年目ですが、アメリカで内科専門医に、そしてエール大学でリウマチの専門医の資格を取り、パリに来たのです。とてもすばらしい先生で、ここの病院やパリの日本人社会でとても信頼されています。このように多くの若い人たちが国際的な場所で活躍していることをもっと多くの人たちに知ってもらい、あとに続く人たちが出てくることを期待したいですね。

パリでは岡田先生、大阪市立大学医学部の学生さんとオペラ座で「L’Histoire de Manon(マノンの生涯)」というオペラを観ましたし、ロンドンでは南へ車で50分のところにあるGlyndebourneで、オペラ「La Boheme」を観てきました。こうした時間も大切ですね。

この夏の予定はなんですか?楽しく充実したひと時をもってください。

ロンドンにて

ご無沙汰しました。しかし国内外でいろいろなことが起こっており、忙しくしています。特に学術や科学政策では国際的な動きがどんどん進んでいるのですが、日本ではこのような動きがあまり認識されていないのも気がかりです。

前回からもいろいろなことが起こっていますが、それらにも時には触れながらもっと頻繁に更新していきます。

去年の9月、ヨハネスブルグで開催された世界環境サミット(WSSD)は、前回のリオデジャネイロから10年ぶりとなる開催でした。南北問題等の根本的な問題は、政治的な解決は何もできませんでした。しかし、科学者社会を代表する、ICSU等が、いろいろなパネルに招かれ、意見、提言を求められたことは画期的なことです(Science, Sept. 13th, 2002, issue に報告されています)。

小泉首相が途上国の教育への経済的援助を約束し、国連では昨年12月の総会で2005年からの10年を「教育の10年」とするスローガンを承認しました。UNESCOが中心となってプログラムを推進していくことになるでしょう。しかし、教育にはどんな問題があり、どうすればよいのかについては各国とも夫々の問題を抱えており、なかなか解決策を見出せないでいるようです。これが学術に関わる我々の責任です。

そこで、学術会議の主催で1月に沖縄で国際会議を開催し、UNESCOほか多くの参加を得て、情報交換等で大変参考になる結果が得られました。さらに、WSSDでは“Ubuntu宣言”という教育への提言がされ、日本学術会議が中心になって2年前に結成したアジア学術会議が、この宣言にサインした世界11の組織の1つになりました。これは大変なことです。これにともなって次のステップへの戦略会議を、この宣言にサインした11の組織が集まって、2日間に渡り東京の国連大学でブレーンストーミングをしました。その結果、5月始めに開催された国連の委員会で「科学者と教育者」の重要性が新たな“Stakeholders”として認められる文章になるまでにこぎつけました。大変なプロセスでしたが、国際政治の複雑なプロセスにどのように働きかけるかなど、だいぶ勉強になりました。

医学部の学生さん、特に6年生には来年の卒後研修義務化に心配が集中しているのではないでしょうか。たしかに、このような大きな問題を扱っているにしては、厚生労働省の情報提供が少なすぎます。思い切ってマッチングは3年程度延期するとか、今なら実行できるのに。とにかく、全研修病院、施設が参加しなければ「マッチング」はうまくいきません。新しいことは、時間をかけて、情報を充分に公開しながら進めるのが肝要です。従来は考えられなかったようなことですが、政府の政策形成には国民、関係者とのオープンな会話と、開かれた情報が必須です。良いシステムは関連者皆で作り上げていくものです。

2003年6月

東海大学総合医学研究所 第6回公開研究会報告
「ここまで来た! 東海大学発バイオベンチャーのフロンティア」
日程: 2003年6月27日
会場: 霞ヶ関ビルプラザホール

関西リウマチフォーラム
日程: 2003年6月28日 
会場: ホテルグランビア京都
特別講演: 「医学、生命科学:21世紀のチャレンジ」